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140文字のショートストーリー

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「きゃ」遅刻寸前。学校までトーストをくわえたまま走っていたら、曲がり角で誰かとぶつかった。「怪我はない?」優しく手を差し延べてくれた学ランがよく似合う彼に、心臓が高鳴る。こんな、一目惚れなんて、55年生きてて初めてだわ!


あなたがいなくなったら困るの。あなたがいなくなったら生きていけないわ。だから、別にあなたのためなんかじゃなくて、私のためなんだから。だって私が乗らなきゃあなたは廃線になっちゃうじゃない。そしたらスーパーにも行けやしない。


さわさわ。お尻のあたりを撫でられた。痴漢、という覚えたての単語が浮かぶ。恐怖で声もでない。痴漢野郎はそれを見てニヤニヤ笑う。体中の毛が逆立つ。「ニャー!」「わっ」引っ掻いてやった。触られたところは丁寧に舐めておく。まったく、痴漢とは実に卑劣な行為だ。


「出会いは?」「僕の一目惚れでした」新郎は答えた。「毎日メールをしたり電話をかけたり、どうにか会いたくて家の周りをうろうろしたりしていた時、彼女から声をかけられたんです。『あなたの陰湿さが好きです』って」新婦は黙って頬を染めた。


「あ、おかえり」彼は柔らかく微笑んだ。一人暮らしの長い私はその笑顔に心が温かくなった。誰かの居る家に帰るってこんなに素敵なことだったんだ。でも。私はドアを閉めると、携帯を取り出した。「私の部屋に空き巣が居まして……」空き巣のいる家に帰るのはあまり素敵じゃない。


「夢があるんだ。それは君がいないと叶えられない。だから、僕と結婚してほしい」「まあ……」「婚姻届も用意してある。だから、頼むよ」「いいわよ。でも夢って何?」「一度でいいから離婚ってやつをしてみたかったんだ」 ベタすぎでしょうか


灰かぶりが現れて硝子の靴を履きました。ピッタリです。王子は喜びました。けれど灰かぶりを見た周囲の兵たちが慌てて2人を引き離しました。「王子、せめてあと5年は待ってください」「5年過ぎたら幼女じゃなくなるだろうが」王子はただのロリコンでしたとさ。


「ご飯にする?お風呂?それとも……」「君が食べたい」予期せぬ答えに私の顔が赤くなる。けれどすぐに青くなった。彼の手に握られていたのは、包丁。彼は言った。「君が食べたいな」


「お父さんを僕にください」「……何そのベタな言い間違い」「ち、違うんだ。僕には父親がいなくて、でも、君と結婚したら『お父さん』ができる。他の誰でもない君と結婚して、お父さんができる。幸せなことだよ」「私貴方のそういう言い訳が上手いところが好きなのよね」


月が綺麗ですね。そう言えばわかるものだと言ったのはたしかあの夏目漱石だったと聞く。僕はさっそくその告白方法を試すことにした。空にはちょうど満月が顔を覗かせている。「月が綺麗ですね」彼女は目を大きく見開いた。「その告白方法、昼間にはオススメできませんよ」


踏切の音が五月蝿いくらい響き渡る。ピタリ。足を止める。そのまままた一歩踏み出して、中に入ってしまえば、私はいったいどんな風に死んでいくのだろう。けれど向こう側で貴方が手を振ったから、私はその妄想をやめた。電車が通る。踏切が開く。私は貴方に向かって駆け出した。


……また捕まってしまった。監獄と呼ばれるここに放り込まれるのは何度目だろうか。確かに食事にありつけないことのある外の暮らしと比べたら、快適かもしれない。雨や風を防ぐことも可能だ。しかしここには自由がない。私は脱獄を誓った。「タマ、ご飯よ」「ニャン♪」


君からの電波を待つ。電話だってメールだって構わない。君が目の前に現れてくれるのが一番良い。それがプラズマでも錯覚でも、精神の病気と診断されてもいい。死んだ君からの交信を待つ。君がいないと僕はこんなにも不安定です。


悲しくもないのに、涙がこぼれる。悲しくなんてない。ただ、後から後からこぼれていく。こんなことで泣きたくなんてない。いい年してみっともない。だけど、涙は止まらない。こんな、玉葱のみじん切りなんかで号泣するなんてみっともないったらありゃしない。


忘れたいことがあるんです。思いつめた顔で彼は言った。「どういうことですか」「いえ、単語を知っている時点でリア充にはなれないと聞きまして」


「君と家族になりたい」一世一代の告白。どうにか告げると彼女はにこりと笑って頷く。嬉しくて死にそうだ、と思った。けれど。「嬉しいわ……これからはお母さんって呼んでくれるのね」いつの間にか父の物になっていたらしい彼女の言葉に俺は悔しくて死にそうだ、と思った。


運命の相手とは、生まれる前に別れた半身であり、それに出会うということは元々一つであったものが元に戻るということだと君は言った。では僕が双子の片割れである君を愛したのは自然である。「そうよ、お兄ちゃんへの告白のつもりだったもの」僕たちは許されないキスをした。


「お前は……」目の前で彼が顔をしかめる。今朝、ぶつかってしまったことを怒っているのかしら。でも私はこの偶然の再会がとても嬉しかったりする。「私と、再婚を前提にお付き合いしてくれませんか」「先生、転校生に自己紹介させてあげてください」55年目の初恋は前途多難のよう。


「綺麗だね」君に囁く。僕が生まれてから見てきたものすべての中で、一番美しい君に。「綺麗だ」触れてみたいけれど届かない。高根の花、なんて。ウサギになって君の隣で生きていたい。空に輝く満月に愛を囁く男が一人。


「月が綺麗ですね」友達はそれはそれはロマンチックな愛の囁きだと言っていたわ。でも、私はそうは思わない。私といるのに他の何かを綺麗なんて言う神経がわからない。だからそんな言葉無視してやって天を仰ぐ。「綺麗」……そっか、あなたが隣にいるから、ね。 


「好きです」あなたが囁く。「ありがとう」あの子が答える。私はそれを眺めることしかできない。それでも私はあなたの幸せを祈りましょう。あの子の幸せを祈りましょう。「君といると月がとても綺麗に見えるんだ」って、あなたが私を綺麗と言ってくれるから。


私には少々やんちゃな子供がいた。ある日良い子にしていたら欲しいものを買ってあげようと約束した。子どもは大人しくしていた。その日の終りに子供は空に輝く星を指差した。私は困ってしまった。母は皺だらけの顔で笑い、「はい、お星様」色とりどりの金平糖を子供に渡してくれた。


子供が必死に靴をとばしているのでどうしたのかと聞いてみた。天気を占っているのだという。出たのは「晴れ」。なのに子供は悲しそうな顔をしてまた靴を放った。「雨が降ったらお父さんを迎えにいってきなさいって、きっとお母さんが言うから」子供の両親は離婚したばかりだった。


「起きて」眠くてたまらないのに彼女が遠慮なく私の体を揺さぶる。疲れているからとやんわりと彼女の要求を断る。彼女は不満そうに唇を尖らせた。さわさわと私の下腹部に触れる。結婚もしていない男女がふしだらな…そう思うが、気持ち良い。「にゃっ」…ご主人ったらテクニシャン。