小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

恋の掟は冬の空

INDEX|51ページ/74ページ|

次のページ前のページ
 

メリークリスマス


封筒の中身は日付の入った、名前が入った旅行の予約票と綺麗な海辺の小さなホテルのパンフレットだった。
「2月14日にしたから、もう学校お休みだもんね、私も劉も、大丈夫だよね」
「うん。いいね、あったかそうだし海の目の前って書いてあるよ」
「でしょ、温泉もお部屋にあるし、おおきな温泉もあるって書いてあるでしょ」
手元のパンフレットを覗き込みながらうれしそうな顔の直美だった。
西伊豆の地名が書かれていた。
「高いんじゃないの、ここ・・」
「それが、そうでもないんだよね・・最寄の駅からでバスで30分ぐらい乗るらしいけど、海の横をずっとらしいからいいよね」
「うん。なんか料理もおいしそうだよ」
「そうでしょ、おいしい料理に温泉に劉だから、もう楽しみだなぁ・・その頃にはたぶんもう杖って要らなくなってるよね」
「うん。大丈夫だって。ありがとね」
「悩んだんだけど、2人っきりで泊りがけの旅行なんてしてないもんね、いいよねー」
「うん、うれしいよー」
「良かったぁー」
今度はこっちがキスをされていた。
「バレンタインだもんね、これ」
「いいでしょ。もうバイトはお休み取っちゃったもん。今日がんばって働いたから優先だもん」
「うん、頑張ったね。じゃぁ 乾杯しよう、シャンパン冷えてるから」
「うん、料理並べようね」
「俺も手伝うから」
俺も直美も夜中なのに元気な笑顔だった。

お皿に用意してあった料理をテーブルに並べて、七面鳥の丸焼きを暖めて、クリスマスケーキを並べるとテーブルの上はいっぱいになっていた。
ソファーの前で横に並んで食べるのが好きな直美だったから、小さなテーブルはグラスもやっとのっている状態だった。
「シャンパン抜くね」
「うん」
「うわぁー」
栓が飛んで思ったより音がして一緒にびっくりしていた。
「はぃ、どうぞ」
シャンパングラスなんてなかったから、少し小さなグラスで我慢だった。
それでも、注ぐと綺麗な小さな泡がはじけておいしそうな音を響かせていた。
「ケーキ見てもいいかなぁ」
「うん。開けていいよぉ」
箱にかかった綺麗なリボンを丁寧に直美がほどいていた。
「あっー かわいい」
「うん、ほんとにわけてもらってよかったぁ。お店で小さいショートケーキで我慢かなぁって思ったから」
「うん。劉と一緒にクリスマスケーキのろうそく消したかったんだ、私・・」
言いながら小さなろうそくをケーキの綺麗に並べていた。
「劉、火をつけて・・」
「これでいいかな」
部屋の明かりを消すと、ちいさなろうそくの明かりが直美の顔を揺らしていた。
「一緒に消そう」
「うん」
横並びに座りなおしていた。
「いくよー 3、2、1、・・・」
ろうそくが消えた真っ暗の中で直美を抱き寄せて、じっとしていた。何も話さず、ただじっとお互いの気持ちを抱きしめていた。
長い時間の後に口にしたのは、「大好きだよ、直美」だった。

「電気つけようね、さ、食べようかぁ」
「うん、劉、お腹すいちゃったでしょ」
「うん、さすがに腹ペコだわ」
「わたしも・・」
言いながら電気の明かりを元にもどすと、まぶしくってあわてていた。
「さ、乾杯ね、メリークリスマス、直美」
「メリークリスマス、劉」
グラスの音が綺麗に響いていた。
「今日は、ケンタッキーで鳥はいっぱい見ちゃっただろうけど、七面鳥って、俺、食べた事なかったから買って来ちゃった・・」
「うん。私も食べた事ないから、食べてみようっと」
「そっかぁ、じゃあ 切ってあげるね」
「ありがとう、ねぇ ケーキも食べていい・・」
「うん、いいよー」
言いながら、切る場所を選んでナイフを入れていた。
「はぃ、どうぞ」
置かれた目の前のケーキの上には小さなメリークリスマスって文字が入ったチョコレートが乗っていた。
「はぃ、どうぞ・・」
「ありがとぅ」
指でつまんだチョコを直美の口に放り込んでいた。
直美と一緒のクリスマスの小さな晩餐はおいしくって、すごく楽しかった。
右腕にずっと組まれていた直美の腕が、ちょっと食べずらかっただけだった。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生