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恋の掟は冬の空

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直美の笑顔


「ただいまぁー いた、いた、お店に直美。着替え終わったら、この車のところへ来るように言ってきたから・・なんか不思議そうな顔してたけどねぇ。内緒にしたから、劉のことは・・」
言いながら夏樹が車のドアを開けて乗り込んできた。白い息だった。
「そっかぁ、んじゃぁ 俺はコンビニに行こうか・・来ちゃったら困るからさ・・」
「うん。後で、迎えにいくからさ・・」
車を降りながらの大場に夏樹が声をかけていた。
「そこまでしなくても、いいのに・・」
「やるなら、きちんとしないと、楽しくないよぉ、せっかくだもん。 直美が車に近付いて来たら私は外に出て待つから、劉は中にいてね」
「はぃはぃ わかりました」
少し笑いながら答えていた。夏樹の顔は楽しそうだった。
たぶん着替えて出てくるのは、まだ時間かかるかなーって思っていた。
「劉は、直美にクリスマスプレゼントって何あげるの・・」
「うーん。内緒」
「なんでよー 教えなさいよぉ」
「だめだってば・・でも、今日はあげられないんだけどね。入院してたし、外泊できるって思ってなかったから、赤堤の叔母さんに頼んで買ってもらって、ちょっと物が大きいから叔母さんの家にお店から送ってもらって預かってもらってるんだよね。退院したら直美と一緒に取りに行こうって思ってたしね」
遅れてもきっと許してくれると思ったけど、やっぱり今夜プレゼントしたかったなーって考えていた。

「あっー 来たぁ。中で静かにしててね」
夏樹は言いながらあわてて、ドアを開けて、直美が歩いてくる方向に向かっていた。俺からも直美の顔が見えていた。
直美が夏樹と話しながらだんだんとこっちに向かってきたいた。
緊張して、不思議だった。
「ま、いいかあさぁ、早くドア開けなさいってば、プレゼント中に入ってるからさ、」
ドアの横で夏樹の声だった。カーテン付きのワゴン車だから、カーテンで外からは中は見えないはずだった。
「もう、何いってんよぉー 夏樹ったら、なんだか、やだなぁー 開けるってば・・わかったってば・・」
なんか、ほんとにこっちはドキドキだった。
ドアに手がかかったようだった。
「なにぃー どうしたのー 劉 ・・・やだ、もう・・・」
「帰ってきちゃった・・」
大きな直美の声に照れ笑いをしながらだった。
「なんでぇー いつよぉー」
右手を出して俺の手首をつかんでいた。
「ごめん、だまってて」
「まったく、夏樹が変だから、おかしいと思ったけど・・・」
「家で待ってようかと思ったんだけど、迎えに行こうって夏樹がうるさいからさぁ・・」
「もぅー 帰って来るなら私に先にいいなさいよぉー 退院しちゃったわけ・・」
うれしそうないつもの直美の顔に戻っていたけど、少し、ふくれっつらだった。
「外泊許可もらったから、今夜だけね、退院は日曜日ね」
「明日まで いられるんだよね、それって・・」
「うん、夕方までね」
「もぅー 言ってくれないから、夕飯の支度なんか、なんにもしてないよぉ」
「いいって、そんなの」
「びっくりしちゃったぁ・・」
手首ににつたわる直美の手はあったかで、その恥ずかしそうな笑顔は大好きな直美そのものだった。
「やだ、そんなに見ないでよ、忙しくって疲れた顔なんだからぁ・・」
「かわいいよ」

「あのう、もういいですかぁ・・・」
直美の後ろから夏樹の声だった。
「やだぁー いいに決まってるわよ、ありがとうね夏樹」
振り返りながら直美が夏樹にお礼だった。
「なに、言ってるのよぉ イブですから プレゼントを気に入っていただけてうれしいです・・・リボンとか劉の頭に付けさせちゃえばよかったかなぁ・・」
二人で笑顔をかわしていた。
「あっ 大場呼んでくるね、体冷えちゃうから中に入って待っててよ、直美」
言いながら夏樹はコンビニへ走っていくようだった。
「大場君、コンビニにいるの・・」
隣に座り込みながら聞かれていた。
「うん。なんか夏樹が、ちょっと ここにあんたがいるとじゃまだからとか言ってね・・」
「かわいそうにー 大場君」
「うん」
「はぃ。プレゼントにお返しのプレゼント・・おかえり劉」
言われてほんとに短いキスをされていた。

「いいですかぁー 入りますよぉー」
ドアを開けながら大場と夏樹だった。
「大場君ありがとうねー ごめんね」
「いいのよ 直美ちゃん、近くだもん、お仕事おつかれさまでしたぁ。さぁ帰りますかぁ」
エンジンキーをまわしながら元気な大場の声が車内に響いていた。
「うん。帰ろぉー」
夏樹も元気だった。
直美は後ろでそれを見ながらうれしそうに俺の腕をとっていた。
「あのさ、寄り道しようかぁ 少しだけ・・いいかなぁ・・」
「どこへよ・・それって近くなの」
ハンドルを握りながら大場が聞きかえしてきた。
「赤堤まで、ちょっと行かないか、よかったら大場、車まわしてくんない・・」
「いいけどぉー 夏樹も直美もいいのぉ・・」
「あっー 教会行くのぉー、行こうよー イルミネーション綺麗なんだって、それにイブの教会なんて行った事ないもん、ね、行こうよ」
直美がうれしそうだった。前に話した事を思い出したようだった。
たぶん、この時間だったらミサが始まっているはずだった、小学生の時に1回だけ見た事があった。いい思い出だった。
「へー 行こうよ、大場」
夏樹もうれしそうだった。
「あいよー。じゃあ行きますかぁー あの親戚のとこだろ。大体覚えてるんだけど、近くになったらわかんないかもしれないから、教えろよな柏倉・・」
「そこ左で、まっすぐで 大通りを右で2個目の信号を左だな。きっと・・大体、わかるだろ」
「うん。そんな感じだな、大体は覚えてるから」

静かな住宅街をワゴン車がうれしそうな4人をを乗せて走っていた。
「ねぇ 見て・・あそこ・・」
つかまれていた腕を握らながら直美の小さな声が耳元でだった。
直美の目線を追うと、三日月だった。この前病院で直美と見たときよりも細く光っていた。
それは、高校2年生の時に初めて直美と学校の帰り道を歩いた時に眺めた三日月とそっくりだった。凛ととしてこっちを向いて綺麗に輝いていた。


作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生