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恋の掟は冬の空

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勉強の後は


「さてと、休憩しようか」
直美の声だった。
腕時計を見ると5時ちょっと前だった。
「はぃ」
ちょっと疲れたような顔だったけど声は元気な夕子だった。
「劉、おもしろいの・・そのマンガ・・」
ずっと静かに読んでから直美に不思議そうな顔をされていた。
「けっこう 面白いや。夕子ちゃんさ、これの続きってどれなの」
「あー 柏倉さん、それ1番新しい号だから・・あとはその前のしかないですよぉー 順番間違えちゃいましたね」
月刊誌の最新号を読んだらしくて、夕子に笑われていた。
「そっかぁ ま、いいか」
「コーヒーか紅茶でも、飲もうか 夕子ちゃん・・」
「はぃ、ポットのお湯も、そこにカップもありますから・・」
ベッドの横の小さい机の上だった。
「私は紅茶にしようかなぁ 劉はどうする・・」
「あ、俺も紅茶で・・」
「わたしも、紅茶にします」
全員紅茶にすることになった。
もちろんティーバッグの紅茶だったけど、おいしそうな香りだった。
「あのー 直美さん 聞いていいですかぁ・・」
「なーに わからないところ思い出しちゃったぁ?」
「いえ、そうじゃなくて、直美さんも柏倉さんのこと、最初に見たときから好きだったんですかぁ・・柏倉さんは直美さんを見たときからだって言ってましたけど」
「あー まったく」
ちょっと夕子をにらんでいた。たぶん聞くだろうなって思ってたけど、俺の目の前でとは思わなかった。
まったくって顔で直美も笑っていた。
「うーんとね。聞きたいの?」
「はぃ そりゃもちろん」
なんかすごくうれしそうな顔の夕子だった。
「劉のことはね、中学生の時に初めて見たときね、いいなぁーって思ったんだけど、学校別だったしね・・そうしたら高校生になったら同じ学校になったからね・・ずっと気になってたんだけどさ、クラス別だし、劉ってバレー部でさ、授業終ると夜までずっとだったし、日曜とかも練習してたから、見てただけかなぁ、1年生の時は、あまり話をした記憶ないんだよね・・でもね、ずっと好きだったんだ。そしたら 劉も私のこと好きだったらしい、初めて私を見たときからね・・後で聞いたんだけど、ずっと見てたんだってさ 私のこと」
思い出しながら恥ずかしそうな直美だった。
「ふーん そうなんだぁ 昨日聞いたときにどっちも最初から好きだったらしいよ お互いにって、柏倉さんが言ってたのは ほんとなんだぁ・・」
「信じてなかったんだ・・」
笑いながら夕子に直美が聞いていた。
「それでね、直美さんが柏倉さんに 彼女になってあげるねって言ったって昨日聞いたんですけど・・」
「そんな話も聞いたのぉー まったく・・」
直美に睨まれていた。
「あ、直美さんに直接聞きなさいって言われたんですけど無理やり私が聞いたので・・」
うんうんって俺は大きく首を振っていた。
「だってさー 2年生になったらクラス一緒になったからけっこう話とかをするようになったのね。でね、6月ぐらいになったら、学校の授業開始が8時半なのに40分以上も前に二人とも登校して誰もいない教室でね毎日会ってて、劉と私だけなのに、好きだって 言わないんだよー 劉って・・おかしいよねー でもね私のことずーっと好きなの知ってから、夏の夕方に練習終ったところで捕まえてだったかな・・なんか急に言いたくなっただけなんだけどね、ほんとはね」
「やっぱり どんかんだったんだ・・柏倉さんって」
うれしそうに夕子は笑っていた。
「うーん、どうなんだろう・・」
直美も笑っていたけど 俺も笑っていた。
「そんな 感じかな・・・あってる?」
俺のほうを見ながらの直美だった。
「あのー どこがいいんですかぁ 柏倉さんって・・」
「なに、その言い方・・」
口を挟んでいた。
「えっ 変な意味じゃないですよぉー、単純にどこが好きなのかなぁって・・」
夕子はあわてて言い直していた。
「困っちゃうんだよねー それって・・なんか言い方難しくって・・単純に好きなだけかな・・理由なんてないんだよねー」
「ふーん。柏倉さんは どこが好きなんですか・・」
俺にもだった。
「俺にも聞くんだ・・・えっとね、理由なし。好きなものは好きってことかな・・1番好きな食べ物って理由ないでしょ・・それと一緒」
「前も 言ったけどなんかその言い方って微妙だよねー」
直美に怒られていた。
「あー でも、なんかそれってわかりやすいですよ・・」
夕子は直美に顔を向けて笑顔だった。
「あのー で、一緒に住んでるんですよね」
「違うわよー 部屋は別だから・・マンションは一緒なんだけどね。こっちに来るときに私のおかーさんが 無理やりに劉と同じところに部屋借りたんだよねー」
こっちを見ながらだったから うんうんってうなづいていた。
「へー それって不思議ですけど・・」
「あ、劉っておかーさんに気に入られてるのよ、それでかなぁ・・おかしい?」
「私のおかーさんだったら、きっとものすごく怒ると思う」
怒るもなにも、ま、母親がすすんで娘を彼の同じマンションには住まわせたりはしないだろうなーっとは思っていた。
「そうかぁー 」
首を少しまげてだった。
「夕子ちゃんは、彼氏っているの・・」
「あー それって直美さん・・あのーですね いたらとっくに紹介してますけど・・」
わざとふくれっつらの夕子みたいだった。
「あー まだ 聞きたいことあるんですけど・・」
「まだ、あるのかよ」
「いえ、えっと、夏樹さんと大場さんのこと・・」
今度はそっちらしかった。
「あのー 付き合ってるんですか・・」
「どうなんだろう・・劉って知ってるの」
振られてちょっと困っていた。
「大場は昔から 好きなのよ、夏樹のことはね・・で、1回告白したんだけどその時は振られたみたいなんだけど、それからのほうがが仲いいんだよねーあの二人」
「そうそう、どう見てもなんだけど・・きっと夏樹も大場君のこと好きなんだと思うんだけど・・そんな話は私に絶対しないからなぁ・・夏樹って」
直美もなにも聞いてないようだった。
「でも、きっと、あれでいいのかなぁ・・お互いに今の関係が好きなんじゃないかなぁ・・あれって たぶんどっちも今は相手のこと大好きなんだと思うんだけど・・」
「そうだねー 私もそう思うよ」
直美もだった。
「そっかぁ・・えっとですね。直美さん、私ね、直美さんと柏倉さんも素敵だなーって思ってるし、夏樹さんと大場さんも素敵だなーって思ってます。ずーっとそう思ってました。直美さんみたいな恋もしたいし、夏樹さんみたいな恋もしたいなーって」
なぜか 恥ずかしそうな夕子だった。
直美は笑顔で優しく夕子を見ているようだった。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生