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恋の掟は冬の空

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うとうと、で


「劉も直美も、寝てるのぉ・・」
車椅子でウトウトしてたら俺まで寝ていたようだった。
うっすら開けた目の前に夏樹が立っていた。
「そんな格好でよく寝れるなぁ 劉って・・」
呆れた笑い顔だった。
「今、何時・・」
ちょっと寝ぼけて、あんまり意味のないことが口から出ていた。
「えっとですね 3時半ですかね・」
「そっかぁ 少し寝てたみたい・・」
「あれ、今日って日曜だからバイト休みなんじゃないの」
「それがさ、大場がさ、遊びませんかぁ・・なんて間抜けな声で電話してくるから、今、お昼おごらせて、退屈になったから直美も来てるんだろうなぁって思って遊びに来たってところかな・・」
少し笑いながらだった。
「うーん。夏樹なのぉ・・・」
ベッドの中から顔を出して、まぶしそうな目で夏樹のほうを見ながらの直美だった。
さすがに、起きたみたいだった。
「はぃ おはよう 直美・・よくお昼寝はできましたかぁー」
「はぃ すごーく 良く寝ちゃったみたいです」
二人とも笑いあいながらだった。
「で、大場はどうしたのよ・・」
大場の声も気配もなかった。
「駐車場が日曜だから込んでたから私だけ先に降りちゃった。すぐ来るんじゃないかなぁ・・」
「そうなんだぁ・・大変だね・・わぁ こんなに寝てたんだぁ・・」
時計を見て直美が驚いていた。
「直美、良く寝れるねぇこんなところで・・」
「だって お腹いっぱいだったんだもん・・けっこう暖かいし、ここ・・」
「そんな 問題かなぁ・・劉の匂いするんでしょ、その布団・・それででしょ、直美ったら・・」
声に出さずに直美は笑って答えていた。

「ありゃぁあ すいません 間違えちゃいました」
大場の大きな声が響いていた。
「声が大きいってば・・こっちだってば・・」
夏樹があわてて大場を怒っていた。
「だってよー この前までそこだったじゃんよー 聞いてねーもん。よぉ 元気ぃー なんか久々だなぁ」
大場は金曜日に遊びに来てたから、久々ってほどではないはずだった。
「あれー なによー 直美ちゃんも入院なの・・なんでよ。どうしちゃったわけ。足でも折っちゃったわけ・・どうなってんの、大丈夫、ねぇ、どうなってるのよ・・」
ベッドでから顔だけ出していた直美を見ながらだった。
「ばっかじゃないの 大場って・・」
隣に立っていた夏樹だった。
「なんでよー だって、ほら」
「ごめんごめん。お昼寝してただけだから・・ケガしてないから、大場君。間違わないで・・」
あわててベッドから、上半身を起こしながら直美は謝っていた。
「なんだよー からかうなよー びっくりしたぁー」
「誰もからかってないよ。大場が勝手に勘違いなだけだろ・・」
呆れながら、大場に笑いながら言っていた。
「考えなくてもさ、ここってベッドの位置が変わっても劉の病室なんだし、それにさ、女の子が、男の子と同じ病室なわけないでしょ」
笑いながら夏樹が隣に立っていた大場に説教だった。
「なんだよー よってたかって・・びっくりしたから間違えただけでしょうが・・まったく・・」
「ごめんごめん 紛らわしくて・・喧嘩しないでね 夏樹も大場君もこんなところで・・」
ベッドから起き上がって洋服を直しながら直美がまた少し謝っていた。
「ロビーにでも行こうかぁ、ここに4人じゃ狭いから・・
座る椅子は一つしか用意がなかった。
「うん、じゃぁ移動しますか・・」
また、大場のでかい声だった。
「えっと、じゃあ先にいってて・・寝てたから、髪の毛少し変みたいだから・・直していくから」
「じゃあ、私も直美といくから、先に行っててよ」
「じゃ 席とって置くから、早くねー」
注意したから 少しだけだったけど小さな声で大場が答えていた。
「先に行ってるね」
松葉杖を掴んで直美に顔を向けてだった。
「あれー いつのまに・・」
「いいから、いいから・・早く行こう」
病室で大場と話すと気を使ってイヤだったから、先にロビーに向かって歩き出していた。
あわてて 大場も後ろからだった。

やっぱり日曜だったからロビーはお見舞いの人と病棟の患者で込み合っていた。
「あ、すいません そこ椅子いいですかぁ」
大場はちゃっかり椅子を一つ持ってきてなんとか4人座れるように席を作っていた。
「ありがとね・・ついでにさ、飲み物なんか買ってきてくれるとうれしいんだけど・・」
寝てたから喉が少し渇いていた。
「いいよー なに飲むよ、劉は・・缶コーヒーでいい?」
「うんとねー コーラがいいなぁー」
「俺も、そうしようかな・・夏樹とかの分は後でいいよねー」
言いながら入り口の横の自販機に大場は向かっていた。
いつもと変わらない大場だった。

「ほぃ、コーラね」
なんだか知らないけど、丁寧にフリップトップの栓まで開けてくれていた。「ありがとね」
「あ、劉さ、俺って明日からバイトだから、お見舞い当分これないかね・・30日まで年内はバイトだから、それでさぁ、元旦からバイトだってさー すごいねー今の学習塾って・・こわいねー」
月曜からバイトだって聞いてたけど本当のようだった。ドタキャンするんじゃないかって考えてたけどきちんと働くようだった。
「たぶん、もうすぐ退院しちゃうから・・俺」
「うそー ほんと。そっかぁー なんかいいような、さびしいような・・」
あいかわらずの大場だった。
「なんで 大場、バイトなんか始めるんだ」
この前から気になっていたことだった。
「えーとね、買いたいものがあったんだよねー でも、間に合わないから前借りしちゃったんだけどさ親父から・・で、バイト代入ったら返すのよ」
「ふーん。いつも親父にたかってるのに めずらしいなぁー。で、なに買ったんだ・・」
「それは、内緒」
はっきりした口調だった、大場にしてはめずらしい言い方だった。
「ふーん、ま、いいや。ちゃんと働けよー やーめたとか言うなよ」
「そんなに 働かなさそうに見えるのかぁ 俺って」
不機嫌そうだったけど大場は笑っていた。
「あれ、遅いね、直美・・」
「うん 夏樹もね・・」
お互いに好きな女の名前だけだった。
にぎやかな日曜のロビーだったから大場の声もまた大きくなっていた。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生