海へいこうよ
「もう森はあきたから、海へいこうよ」
そうして次の日の朝、お弁当をもって森の出口に集まりました。
初めて見る海はどんなでしょう。三匹は、足取りも軽く、歌を歌いながら丘を越えて行きます。ちょうどお日様が空のてっぺんに来たとき、海が見えました。
「うわー。真っ青だ。大きいね」
三匹はまるで転がるように浜におりていくと、岩場でぴちゃぴちゃと遊びはじめました。
「いたたた!」
子リスはカニにしっぽを挟まれて、叫びました。
「うわ、ぐにゃぐにゃだあ」
うっかりアメフラシを踏んづけた子うさぎが跳び上がりました。アメフラシもびっくりして紫色の液体を出します。
そして、子ねずみは友だちの声におどろいた拍子に、潮だまりにどぼん!
「たすけてえ」
子リスと子うさぎは、子ねずみを助けようと、手を伸ばしました。ところがそのとき、大きな波がざぶんと押し寄せたのです。
「うわー。うわあ。ぶくぶく……」
まるで怪物の舌に巻きこまれたように三匹は運ばれて、岩の上に打ち上げられました。
「びっくりしたあ」
「海って生きてるんだ」
「うん。怪物なんだ」
三匹は怖くなって、急いで帰ることにしました。
そして、こんなこわい思いをしたことがわかると大人に叱られると思った三匹は、海に行ったことを内緒にすることにしたのです。
森が見えたころには、おひさまは山の向うに姿を隠すところでした。森の入り口では、三匹のお母さんが待っていました。
「お帰り。遠くまでいってきたのね」
お母さんたちは叱らずに言いました。
「え、どこに行ってきたか、わかるの?」
三匹は同時に答えました。すると、おかあさんたちはにこにこ笑って言いました。
「海でしょ?」
三匹はびっくりしました。帰ってくる間にぬれた体はすっかり乾いていたはずなのに。
「ほんのり海のにおいがするわ。それから、ほら」
と、ねずみのおかあさんが子どもの体から何かをとりました。白い小さな粒です。子どもたちは目を見張りました。
「塩のつぶよ。今夜はごちそうができるわ。みんなを招待しましょう」
と、リスのおかあさんが言いました。
その晩は、森中の動物が、天然の塩で味付けしたおいしいスープを飲みました。