小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

主人不在の日中に、

INDEX|1ページ/1ページ|

 
昨晩まで着ていた給仕服がきちんと壁にかけられていた。
黒を基調とした、レースの多いスカート。
ここに連れて来られるまでは、私がそれを着ることなんて人生でないと思っていたものだ。

起き上がろうと思ったけれど、体がだるくて諦めざるを得ない。
少しだけ浮かしかけた頭を再びベッドに沈ませると、質の良いマットならではの心地よい弾力が私を迎えてくれた。
それを見計らったように、扉が開く音がした。
「あなた、また旦那様をお見送りできなかったわね」
少女特有の甲高い声に愉快そうに言われて視線を扉へやったら、私に与えられたものと同じ給仕服を綺麗にまとった笑顔が再び口を開いた。
「昨晩は何をしたの?」
「…縄で遊んだわ」
私が掠れた声で答えるより先に、私を覆っていた布団がはがされた。そして、「まあ」と一層愉快そうな声がした。
「可哀想に。痕が残っているわ、リカ」
足の付け根をひんやりした指先の感触がすべる。いつもの心地良い感覚ではなくて、勝手に眉が寄った。
「マリ、冷たい」
「今まで朝食の片付けをしていたの。もうそんな時間なのよ」
「8時?」
「9時よ」
ああ、どうりで不快だと思ったら、指先がふやけているのか、とぼんやり考えながら相槌を打つ。ひんやりした感触が足の付け根を沿って太ももの内側に向かったので、少し開いて迎えてみたら、感触が体から離れていってしまった。
「後始末、綺麗にしていただいているじゃない」
私の、旦那様のお気に入りの場所を、指先の代わりに視線が撫でているのを感じる。「そうなの?」と短く問うと、「そうなの」と短い返事。普段空気に触れないそこを、寒い気がして閉じてしまうと、ベッドが ぎし、と音を立てた。マリの重みと暖かさが腹にかかる。
「ねえリカ、あなたここにきてもう半年よ」
私を跨いで見下ろすマリは、呆れた表情を隠さない。マリの、旦那様のお気に入りの場所が、1枚の布越しに腹をさすった。
「いい加減慣れて、朝旦那様をお見送りできるようになさいよ。こんなに良くしていただいているのに」
マリの両手が私の頬に伸びて、そのまま暖かく包まれた。それでもだるさがとれなくて、返事は元気にできなかった。
「だって、マリ」
腹にかかっていた重さが上半身に分散される。給仕服のレースが肌の上で良い生地だと主張する。そしてその向こうにある、マリの大きくない胸が、私の胸とキスをした。
その心地よさに目を閉じると、頬に軽い圧力があって、抗議を悟った私は仕方なく目を開ける。続きを待つマリの瞳が、思いのほか近くにあった。
「マリのせいよ。マリが昼間、離してくれないから」
「私はお昼間リカと遊んで、夜旦那様に遊んでいただいた次の朝だって、ちゃあんとお見送りしてるわよ」
「それは私"と"遊んでるのじゃなくて、私"で"遊んでるからじゃない」
マリは答えずににっこり笑うと、私の右の頬に置いた手を離してそこに唇を落とした。そのまま唇を耳元に移動して、「それじゃあリカ」と甘えた声で囁いてくる。
「旦那様に、今夜は二人一緒に遊んでくださいってお願いしましょう。そうしたらあなたの負担も減るでしょう」
ね?と繋げたマリの息が鼓膜を刺激する。うなじの上に生えた毛が立ち上がったような気がした。
「あなたが昼間、私を離してくれれば良いんだわ」
反論しながら重い腕をマリの背中に回すと、マリは私の声が届いていないように、くすくすと笑って足を絡めてきた。
作品名:主人不在の日中に、 作家名:澪ちひろ