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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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KE4of4 僕は鍛冶屋で剣士じゃないから

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 「答えなさいよ」
 「何がさ」
 「あなたがその能力を攻撃に使わない理由をよ」
 リュズギャルに問いつめられて平行してしまった。トルコという国ではなされていたというトルコ語で「風」の意味を持つ彼女は、風になびく長い髪をかき分けてもう一度彼に問う。
 「あなたがその炎能力を攻撃に使わない理由を、答えなさい」
 「…何で知りたいの」
 「だってあなたのような能力を持っていながら、なんでまた鍛冶屋なんて地味なことやっているのか知りたいもの」
 「君に先に言っておこう」
 エンリューはむっとしながらも理性で殴りたい衝動を抑えながら(昔は本当に手が出ていたかもしれないが、成長して、というより育ててもらったことで理性を構築する機会を得た)言う。
 「君は反抗期かなんかかもしれないが…だからお父さんの職業を蔑視したいのかもしれないが…鍛冶屋をバカにするな」
 「…何よ急に」
 「僕を拾って育ててくれた人もまた鍛冶屋だった。その人は自分が鍛冶屋であることに誇りを持っているし、そんな彼の弟子であることは僕の誇りだ。つまり鍛冶屋は僕の中ではすばらしい存在なんだ。君がどう思っているかは知らないけどね」
 「まったく…ばかばかしい。拾ってもらったからってあなたがなるのも必ず鍛冶屋じゃなくてもいいじゃないの」
 「何が言いたいんだ」
 「その人はあなたに鍛冶屋になることを強制でもしたの?」
 そういうことか、とエンリューはつぶやいた。
 「別に。…ただ僕はあこがれたんだよ」
 「何が」
 「剣とか銃とかってね…うまく整備してやんないとそれなりの力しか出ない。どんなに優れた武器だってずっと使っていれば欠けたり割れたり、とかくガタがくる。それでもふつうの人は使い続けるよね」
 「だって別にそれで使えないようなもの今時作っていないでしょ」
 「ああ、使えないことはない。ただし、それでその人の実力がうまく発揮できるかどうかは別次元だ。使用に耐えるノットイコール使用で劣化しない、だ。劣化した武器で戦った奴としていない武器で戦った奴なら、本人たちの能力がイーブンであった場合、後者が勝つ。…少し考えればわかるだろう?」
 「だからそんなこと聞きたいんじゃないのよ」
 リュズギャルは顔を真っ赤にして怒る。
 「あなたの力をそのまま戦場に持ち込んで相手を焼いた方が早いでしょ、っていっているの。他力本願的にしか見えないの」
 「そうかい?ならそう認識すればいいと思うけど」
 エンリューは冷たく言い放つ。
 「何であなたは」
 「だって事実、強い奴がたくさんいて、その武器のメンテナンスをやった方が、僕が一人で戦うより効率いいじゃないか。どんなに弱い相手も群れれば強いんだから。ゼロみたいな、1都市ごと破壊できるようなやつはそんなにはいない。群れられたらどんなに強くても一人じゃ何ともしがたい。でも、僕がサポートに回って強い人を複数人動かせれば打ち破ることは可能だ。…より現実的なのはどっちだ。よりこっち側の損害がないのはどっちだ。人命も大事だし、あとは多数の戦士を動かすことでスピード短縮にもつながるし、もしくはたくさんいることで相手に優勢をはかれる。君はアシッドスパークの人材数とか知らないでしょ?いくら正確な数字がないとは言え、1日に起こる事件の半分は連中が原因なんだ。中心地から辺境の地まで、彼らのいない場所はない。それに対抗するのに一人じゃ心細い」
 「名誉欲は」
 「ない」
 「ないの?」
 「そんなもの現場の戦士に与えればいい。僕は戦士にはならないよ。さっきのことで。名誉を追って死ぬくらいなら、陰で支えてみんな長生きする道を探る方を選ぶ。悲しみなんて増やしてもしょうがないじゃない」
 「…男らしくない。なんというかはっきりしないし」
 「いいよ別に。僕は鍛冶屋で戦士じゃないから」
 彼はこれ以上の話を続けるのは無駄だと判断して、その場を立ち去った。
 だが、彼女と話せたことは、彼としては少なくとも収穫であると彼は思っていた。
 (あの娘とはなすことで、自分の存在意義が少しわかった気がする)