パンドラの鍵
プロローグ
人は、どこから来てどこへ向かっているのだろう…。
喜び、哀しみ、苛立ち、様々な感情が複雑に交錯するこの世界で、
人々は自分の居場所を見つけるためにもがき苦しんでいる。
自分という存在が確かにこの世に実在していたのだと、歴史上に刻
み込むために。
しかし時の流れはあまりにも速く、無情にも人々の身体を心を蝕ん
でゆく。
一体誰がこんな未来を予想しただろうか。
高度経済成長の果てに訪れた平和で退屈な日々。
そのくり返しが、人々の心の闇を深くしていくとは……。
何かを見ているようで何も見ていない、死んだ魚のような目をした
人々。
街はそんな人たちで溢れ返っている。
君もそうなのか 見えすぎた将来に夢も希望も抱けず、ただ淡々と
同じことをくり返すだけの日々なのか。
本当はとっくの昔に飽きていたのに、周囲に惑わされて真実を見よ
うとはしなかった。