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【DRRR】 emperorⅠ 【パラレル】

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1.ハジマリのオト



》帝人総受け(パラレル)

『emperor』


この世で最も美しい音楽。
ヴァルハラの歌声。
音楽の神に祝福された天使。

熱狂的なファンを集め、世界中から持て囃され、愛され、望まれた。

その声が恐ろしい、疎ましいと思ったのは、この世で。
僕だけ。



竜ヶ峰帝人は、幼馴染の紀田正臣に誘われて東京・池袋に上京してきた高校1年生の少年だ。
外見的に特にこれと言って特徴はない。
背丈は平均よりも低く童顔であるため、年齢よりも幼く見られることが多い。その性格は穏やかで適度に社交的であり、人当たりの良さから、彼が学級委員長を務めるクラスメイト達からの信望は厚い。

また、彼には裏の顔がある。
池袋を拠点とする無色のカラーギャング”ダラーズ”。
都会に憧れ、非日常的な現象に憧れ、自分を取り巻く環境を少しでも捻じ曲げることを望んだ彼が、ほんの遊び感覚で始めたネット上での虚構の存在が形を得てしまったモノ。
そう、彼はその暴力集団の創始者であり、現在の管理者である。
彼がここまで上京してきたのは、遠い場所からの管理だけでは、その管理が難しくなってきたからでもあった。

そして彼には、また別の顔もあった。
それは、幼い頃にどこか奥底へと封じたもの。
すでに彼の心からは、自分では消した”つもり”になっているものだった。



「なぁなぁ、帝人、カラオケ行こーぜカラオケ!」
「え、いや、僕はいいよ」
「甘いな帝人、確かにあの辺鄙な地元にはカラオケなんて設備なかったから食わず歌わず踊らず嫌いになってるだけだろ!1回行ったら絶対はまるって!歌が上手い=モテる時代なんだぞ!?」
「時代に乗ってなくてもいいから」
「お前、ホント歌きらいだなー。歌のテストがあるときだけ音楽評価2だし。そこまで焦らされると逆に聞きたい!!やっぱりカラオケ行こうぜカラオケ!!」
「1人で明日までカラオケルームに篭ってなよ」
「手厳しい!!」

彼は基本的に、だいたいのことが平均から少し上ぐらいのレベルで出来る。
その中で、音楽と体育の点数だけがいつもよろしくない。
体育は仕方ない面もあった。全体に華奢な体型をしている彼はやはり体力が少なく、運動神経が少ないとか反射神経が遅いとかそういうこともあるのだが、すぐに疲れてしまってついていけなくなるのだ。
それでも一生懸命にしていることはよく分かるし、ゲーム中は全体を見て自分が動くよりも早く、的確な指示を与えることが出来るため、それはそれで勝利に貢献している。
そのため体育の点数が他より劣るといっても、それほど目立つものではなかった。

しかし音楽は。
音楽史の筆記や、クラシック音楽のリスニングテストは問題ない。
小柄な彼は手も小さいが、努力によってギター演奏などの実技もクリアできている。
問題はそれが歌唱になったときだ。
彼は歌の試験の際、1音も発しなかった。
それは異様なほどの無表情で。
再試験になって個室で1人になっても、口を開くことすらせず。
普段の態度から考えてあまりに不自然であるため、音楽教師が相談に乗ると突き詰めたが、彼は苦笑しながら言った。

「僕は、歌を聞くのは好きです。でも、歌えないんです」

歌わない。絶対に。歌えない。
彼の意思は強く、それでいてその決心を見せるときの表情は脆く涙が零れそうな切なさ。影のある表情の瞳のさらに奥に、大きくて底のない闇が巣くくっていた。

音楽教師は、背筋をゾワリと振るわせ、それ以上彼に歌うことを強要はしなかった。
また、彼の幼馴染にあたる少年にもそれとなく歌わない理由を知らないか尋ねてみたが、のらりくらりとかわされ、ついにその原因を知るには至らなかったのである。