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【DRRR】 emperorⅠ 【パラレル】

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4.emperor:エンペラー




他人に、「そういえばあの曲、サビの部分どんなだっけ」、と聞かれてついさっきまで好きでよく聞いたとかって話をしていた場合、困る。
「知ってるんだろう教えてくれ」、そう言われても、困る。
聞かれても、答えられないのだ。
脳の中では思い出したフレーズが流れていて、これをそのままスピーカーにつなげることが出来たら本当に良かったのだが、あいにくそんな装置が発明されたと聞いたことはない。
以前ならそこで、困るより前にすぐに首を突っ込んでくる幼馴染が率先して歌ってくれていた。それは特に帝人を庇ったワケではなく、「俺の美声を聞け!」という理由だったので、気兼ねをする必要もなくて楽しい思い出だ。

今、それを救ってくれたのは携帯だった。

「…あ、そういえばこの前、着うたで取ったんだ」

そう言って流せば、ホンモノなので確実に分かり、なおかつ自分が歌う必要も、それを誤魔化したという妙なズレもなく過ごせる。
そうしてやり過ごした帝人を、隣にいた杏里もホッと胸をなでおろしてみていた。

「すみません。私、そういうの本当に疎くて」
「え、そんなの気にすることないよ!人それぞれ得意分野が、ほら、園原さん本のことなら凄くよく知ってるし、僕はそういう話になると疎いからさ、同じだよね」

慌ててフォローすれば、杏里はお礼を言いながら頷いて笑う。
本当は帝人も気付いていた。
杏里が以前に正臣がしていたようなフォローをしたくて、それが出来なくて謝ったということに。
しかしそれは仕方ないことだ。正臣のいた心の窪みに代わりに誰かが入れるわけではないし、それを帝人が望んでいるわけでもない。
しかも正臣はきっと帰ってくるから、埋めてしまう必要はないのだ。

そうは思ってもやはり、そこに意識が向いてしまう。
そのぽっかりと空いた穴から染み出してくる湧き水のような記憶が、最近よく夢に現れる。
それは、悪夢のようで、トロリと甘く、毒の味がした。