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文殊(もんじゅ)
文殊(もんじゅ)
novelistID. 635
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ヒマワリ嫌いの夏嫌い、最低なヤツは山本と俺。

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 好きなのはイコールヒマワリな訳であって、俺の心からの想いが届く訳もない。だからあっさり口にできるってことだ。
 針がそろそろ、次の講義の時間を刺そうとしてる。苦手な古典だ。現代文を教えてる若い臨採の先生なら、出たかもしれない。だけども、声のでかい中年オヤジの教える古典だ。この暑い日に、他にほとんど受ける奴がいない古典、受けるのか。
 暑い日に、暑苦しいオヤジの暑苦しい講習。
『憂鬱って、こんな気分か?』
 贔屓目に見てるからかもしれないが、教え方は臨採の先生のが上手い。若いし、女の先生だし。栗木真知子先生。ようするに、マチコ先生な訳だ。事実、スタイルも抜群でクラスの男子は彼女の授業の時黒板よりも顔やスタイルを見ている。最低だ、と罵られようとも、自然と目が行くのだから仕方がない、と力説していた男が、隣のクラスからちょうど来ていた自分の彼女に思い切り静かな声で「マジで最低」と言われていたのを思い出す。
 今朝一瞬だが、爽やかなフレアスカートをひるがして歩く彼女を見た瞬間後悔した。ほら、俺だってちゃんと男子。
 なんで、古典にしたかな。
『現代文とっておけばよかった』
 講習代は自分の懐から出るから、なんてケチったのが裏目に出た。
「あー、次マチコ先生の現文か……めんどい」
「あ?」
「……ん?」
 一瞬の間がおかれて、その時急激に蝉の鳴く声が大きくなった気がする。気がするだけで、実はさっきからうるさい。たぶん。
「めんどい?」
「……ん、めんどい、かな」
 濁すように、曖昧に言いながら、少し期待するような響きの言葉。コイツはだから俺のツボとか、弱点とか知り尽くしてるんじゃないか。相変わらず良い攻撃だ。
「俺も、めんどい。次、古典のガミだし」
 素直に言えば、俺もお前とサボりたい?
 なんて言えるわけないので、婉曲戦法にしてみた。どうだっていいか、そうか。
「……図書館、開いてるよな」
 その呟きに落ちつき払ってそうだな、と言うけれど心臓が痛い。あ、いやなんか具合悪いとかじゃなくって。鳴る回数は決まってて、回数を越えたら寿命だ、とかなんの番組でいつの時代にやってたか忘れたけど、聞いたことくらいあるだろうか、もし俺がこのままの状態ならあと何年持つかなんて、簡単すぎる、たぶん十年いかない。
「……いきたい、とか」
 言ったら笑うか、と一瞬視線を向けられたが、そろそろ血液が沸騰しそうだ。青少年には刺激が強すぎる。意味がわからない、と言われるのは百も承知。むしろ俺以外全員そうであれ。全て聖人であれ。
 声が震えないようにするので、せいいっぱいだ。腹に力を入れて目の前の奴に言ってやる。
「むしろ色んな意味でバッチコイ」
「どんな意味でだよ?」
 すぐされた切り返しは華麗にスルーで、ペットボトルを教室端のゴミ箱に投げ入れる。ナイスシュート。
「……俺もいきたい、って意味で」
 無視かよ、とか言いながらワークやらなにやらカバンに突っ込んでる音にぎりぎり消えるくらいの音量で呟いた。
 あぁ、なんて最低だろう。
 同じクラスの山本の彼女よ、お前の彼氏も最低だが、俺の方がもっと最低なんだよ、知ってたか。