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【APH】本気出して菊菊について考えてみた

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我はここにあり



これは最も古い記憶の一つだ。
私が生まれた頃、私という意識はまだ希薄で人の中に埋もれれば人になってしまうようなものだった。もちろん多くを覚えているわけではない。人間達が幼い自分の姿を曖昧にしか覚えていないように、断片的な記憶や光景が焼きついたように残っているだけでその頃の私がいったいどんな生活を送っていたのかはほとんど覚えてはいない。
鮮烈に覚えていることもいくつかあるといえばある。もっともそれさえも土に埋もれ風化し忘れていることも多い。昔のものを掻き集め後付ででっち上げた記憶がどこからどの範囲までなのかも覚えていない昔にもおぼろげながら『私』はいた。
そんななかの最も古い上司の一人の話だ。私に『私』という概念をもたせ、現代よりははるかに規模は小さくまばらであるものの「くに」として立たせた女性がいた。そのひとは美しい人であったのかといわれてももう顔も、その正しい名前も思い出せないが、彼女がいたという気配だけは今も強く持っている。
『霊感』というものでもしくは『神懸り』で民をまとめた彼女は周囲を海に囲まれ似たり寄ったりの文明しか持たない私の外に目を向けた。はるかに力を持っていた大陸に渡りその皇帝に私を認めさせ、同時に東海の島のその主としての地位を得たのだという。その島こそ『私』であの子の原型だ。
それ自体は以前も何度か行われて革新的な出来事とはいえないのだろうがその自分よりはるかに上位の者から賜った地位、後ろ盾・・・あるいは口実・・・を利用して国を形成し民をまとめる手腕が彼女にはあった。さらに彼女は優れた占い師の顔もたしかあったと思う。そのため天候や侵略者の対応のことも彼女が指揮を執っていた。もちろん地を耕すのは土の民だし、それを統率するのは官で、兵を率いるのは軍師であり彼女は大まかな方向、けれど具体的な解決案を、を示すだけだった。自信はないがおそらくそうなのだ。
彼女の本の短い人生の前後に私の本当に基礎的な、骨よりも髄よりも核というのに近いものは造られ始めたのだろうと思う。東の小島の女王と認めてもらうに当たり兄なった大陸から自らの手で作物を育てるということを教えられ、形として残る言葉も伝えられていた。私はおろか上司のほとんどのものがその言葉を使うことはできなかったけれど便利なものだというのは十分理解して少しずつ吸収していった。鉄のいなし方も、獣の囲い方も、生活に必須でないことを考えるということも。現代に残る古い伝説の一部はきっとこの頃の生活をそれとなく混ぜているはずなのだけれど私にもそれがどこでどういう意味なのかは分らない。
私を小さな芽になるまで育てたその時代は一度終わりを告げ、土葬してしまったことは間違いない。これだけ影響力があっただろうにもかかわらずいまや彼女が一人の女性だったのかそれとも組織立った何かだったのか実在したのかどうかさえおぼろげなことが証拠だと私は思う。新たに目覚めたあの子に、今に直接連なる時代に誰の記録に留まることもなく覇権は流れていった。そのせいで私はほとんど消滅してしまう。かろうじてこの『国』を構成する小さなくにに立場を変え忘却を重ね小国分立の時代のなかをのらりくらりと生きていくはずだった。
しばらくあとにどういう塩梅なのかまた違ったたちばで目を醒ますことになる私は遅れて目覚めた弟との長く長い付き合いが始まる。

(くに=人口や領土が村からの小さい単位。国=領土が大きく政治的な統率も見られるようになった段階。という区別。類例としては神聖ローマが国ならプロシア・バイエルン・オーストリアはくに。日本が国なら、薩摩藩・土佐藩なんかはくに。類例が作中とは規模が違うという矛盾)
古代。
(タイトル・・・KAITOオリジナル曲「わだつみ」より)