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魚屋スイソ
魚屋スイソ
novelistID. 16252
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ガスマスク水

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ガスマスク水

 きもちよかったから授業が終わったあともふやけるまでプールの底で自作のテクノポップ歌ってたら初潮がきちゃって、ドリルみたいに。あまりに前衛的でショックで水がピンクで、ねばねばしてるのをだれかに伝えたくてプールから出たんだけど、女子更衣室バリ封されてて入れなかった。中から委員長の酸っぱくて生ぬるいアロエドリンクみたいな喘ぎ声が聞こえてて、それが授業前に見た彼女の水玉のパンツと大人のブラだけにじゃなくて自分のお気に入りの白いハイソックスにまで染み込んでいってると思うと口の中がにがにがした。
 仕方ないから教室めがけてスクール水着のままひとひとと歩き続けた。塩素と女の子のにおいのするピンクの水滴らせてるおしゃれなわたしをみんなに見てほしかったのに、東館の二階の廊下は死体だらけでだれもこっちを向いてくれなかった。しかもみんな顔の穴と性器を中心に鉄タマゴに寄生されててすごいキッチュ。ピンクよりメタリックのほうがおしゃれに決まってる。くやしくて泣きそうだった。思わず死体を蹴った。先輩だった。眼鏡の奥で鉄タマゴがきらきら光ってた。
 先輩の眼鏡を借りて、片方のレンズに出てきたばっかりの血を塗ってみた。青色が足りないから、3D眼鏡にはならないけど、かけるといい気分がした。そのまま歩き続けた。
 教室についた。相変わらず廊下は死体だらけだった。でももしかしたら教室ではいつも通り授業をやっているかもしれないから、中へ入るには、いい子ちゃん風、はぶられ子ちゃん風、ったくかったりーぜ子ちゃん風、どれかを装わなくてはいけなかった。けど逡巡していて気づいた。わたしスク水だった。しかも初潮がきたばっかりだから、みんなわたしのことしか考えられなくなって授業ジャックしちゃうかもしれない。国語の時間だったらいいけど、確か今は数学の時間。連立方程式がわからなくなってしまうのは将来困る。だからわたしは滅却した。煩悩ゼロ子ちゃんという名の透明人間になった。ドアを開けた。いきなり襲われてしまった。わたしはだれにも見えないはずだったのに。ガスマスクの男に押し倒されて馬乗りされて腕押さえつけられてスク水のままレイプされた。もしかしたらこの男のガスマスクのゴーグル部分に赤外線センサーでもついているのかもしれない。でも煩悩ゼロ子ちゃんはなにも感じてはいけないと思ったからそのまま犯され続けた。気持ちいいとか痛いとかはどうでもよくて、ただ、さっき初潮がきたばっかりなのにもうレイプされてるとかわたしビューチフル極まりないとつい思ってしまって、煩悩を滅却するのは難しいなと感じた。
 だれかの絵の具セットが床に落ちてた。18色セットだった。わたしのは12色セットだったからいつも肌色をうまくつくれなくて困ってたのを思い出した。私を犯している男はガスマスクを装着してて、夏なのに学ランで白い手袋をつけてたから肌の色はわからなかった。もしかしたら虹色の肌をしているかもしれない。12色だったらいいな、とか考えていたら顔射されてた。顔射というより眼鏡射だった。先輩の眼鏡は私の経血とこの男の精液とでべとべとだった。天井がいちごミルク色になって見えた。教室にはスク水のわたしとガスマスクの男以外だれもいなかった。黒板には自習って書いてある。頬に飛び散った精液を拭いながらセックスは自習じゃないだろってこの男に言ってやったら、ガスマスクをシュコーシュコーさせながら、教師が教えなてくれないことを生徒同士でするのは自習だろって返されて不覚にもときめいてしまった。性器は虹色じゃなくてピンク色だった。チャイムが鳴って四限が終わった。
 ガスマスク男によると、学校には処女と童貞にしか効かないウイルスが撒かれたらしかった。今頃他の教室でも生徒同士が鉄タマゴに寄生されて死ぬのが怖くてセックスしているのだろう。先輩は童貞だから死んでしまった。わたしも危ないところだったらしい。初潮が来た日に処女消失しちゃうなんて死んでもいいなと思ったけど、少しだけ自慢してやりたい気にもなった。さし当たってガスマスク男にそのことを伝えたら、おれもはじめは死にたくない一心でおまえを犯したがスク水の女の子とセックスできたのだからもう死んでもいいって。わたしはべつにガスマスク男とセックスしたかったわけじゃなかったけど、それを聞いたらやっぱり死んでもいい気がしてきた。死ぬのが楽しみになってきたと言ってもいい。初潮が来てしまって、処女膜を失ってしまって、そしたらもう死ぬくらいしかできない。14歳にして真実を悟るなんてわたし偉い。
 屋上に向かうと、すでに生徒の列ができていた。少し先に委員長の姿もあった。男子と女子が手を繋いで次々に飛び降りていく。きっと校庭は砕け散った死体だらけになってる。わたしもガスマスク男と手を繋いだ。もうすぐわたしたちの番だった。生乾きのスク水が肌に張り付いてスースーした。フェンスを跨いで下を向いたら、先輩の眼鏡が先に落ちていった。
作品名:ガスマスク水 作家名:魚屋スイソ