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川口暁過去作品集

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4時に会いましょう


学校は嫌いだ。
勉強もたいしてできねーし。
口下手だし。
高校は父が理事長っちゅうこねで入ったし。
毎日つまんねえ。
そしたらとうとう親父に授業くらい出ろって怒鳴られた。
だから俺は交換条件をだした。
秘密部屋。
マジックミラーの秘密部屋...





ここにいるとまるで死んだ感じがする。
俺は皆が見えるのに皆は俺が見えない。
死んだときはこうやってぽつんと取り残されるんだろうか?
ならこれを練習だと思っていよう。
こんな若いうちから死後の練習なんて可笑しいか...
しばらくぼーっとしてたら急に声がした。
「神様神様。岡田先輩が私を好きになりますように」
そのこがあまりにも可愛いからつい喋ってしまった。
「大丈夫じゃないの。あんたなら。」
「...!!」
あ。
きょろきょろしてる。
戸惑った顔も可愛いな。
「...神様ですか?」
恐る恐る聞き替えされる。
「..そうかもしんないし、そうじゃないかもしんない」
「えっと..じゃぁ神様?あの..私を知ってますか?」
しるわきゃねーだろ!!
「さぁね。俺はみだし者だから」
これは合ってる。
「...神様界のはみだし者...?」
なんだよそれ!!神様界?!
「でも、私を守っててくれたんでしょう?」
...
「受験の時も、秋田犬に襲われたときも、ストーカーにつけられてたときも...」
?!
...まぁそういうことにしておくか。
「...まーな」
「...ありがとうございます!!」
「...」
「ずっとずっと信じてたんです。私を見守っててくださる神様がいるって...」
...
そんな嬉しそうな顔すんなよ。
「...また、会えますか?」
「..ちょっとならね」
「じゃぁ..明日のちょうどこの時間、4時に会いましょう」
「うん...」




次の日、俺はさりげなく岡田先輩を探してみた。
普段から人付き合いがない俺にはよくわからなかった。
仕方がないから、初めてクラスのやつに自ら話し掛けてみる。
「なぁ」
「わっ本山!!初めてしゃべったよ」
そういえば俺は本山だった。
「いや、岡田ってゆう先輩しってるか?」
「知ってるもなにももう、超有名だよ!!」
「そうなのか?」
「そうなのかって...ルックス良し!!頭も良し!!その上運動神経抜群!!この前の全国模試なん
か、先輩2位とったんだぜ?!」
「へー..ありがと」
俺とは正反対だな。





「か..神様?」
来た来た。おせーよ。
「すみません...委員会で遅れてしまって...」
「...」
「あの..怒ってますか?」
「..別に。」
「じゃぁ、あの...その...」
「なんだよ」
「岡田君は..私をどう思ってますか?」
「さーな。そんなこと言ったら楽しみが減るだろ」
そんなこと知りもしないくせに。
「そうですね...そうですよね!!」
...なんでこいつ喜んでんだ?
「でも良かった...」
「え?」
「もしかして昨日のことは夢だったんじゃなかったかって...ずっと心配だったんです。」
にっこと微笑む彼女。
あぁ...
ごめんな。
神様じゃなくて...。
まるでオペラ座の怪人の気分だよ。
嘘をついてまで、彼女をはげまそうとする....
「では、また明日4時にあいましょう。」






「神様!!」
彼女はいつになく幸せそうだった。
「どうした?」
「岡田先輩が..彼女いないって!!」
「...」
あぁ、もやもやする。
そうだ...
俺はもうとっくに彼女にひかれてる。
初めて会えたあのときから...
「もう...あえない」
「...え?」
「...」
「なんでですか?!」
「お前は綺麗で優しくて...最高のやつだよ。でも俺は...!!最低のやつだ。」
心が....
「なに言ってるんですか!!あなたは...すごく、すごくっ...心が綺麗です」
「...だまれだまれだまれ!!!」
どうせお前は俺のもとへは来ない。
そんなことが分かっててなんで普通にいられるんだ?!
「神様っっ...!!!」







(またいつもの生活に逆もどりか...)
あの日からしばらくして、岡田先輩に新しい彼女ができたと噂がたった。
どうせ彼女だろう。
会いたいなぁ...
「本山!!」
「...なに?」
「やべーよ!!めちゃ可愛い1年が呼んでるよ!!」
「は...?」
彼女だった。
「...なんですか?」
にっこりと笑う彼女。
「ほら、やっぱり。綺麗な目をしてる」
ちょうど午後4時0分の出来事だった。
作品名:川口暁過去作品集 作家名:川口暁