BSS81 Far East
地震によってつぶれた家屋。火が上がっている地域からは離れているからここなら奇跡的に助かるとかあるんだろうな、なんて期待を持ったのが間違いだった。この国にはレスキューとして存在する自衛隊を動かす力を持った指導者がそのときいなかった。自衛隊嫌いとか自衛隊アレルギーとか、自衛隊反対派、とか言っている場合ではなかった。少なくとも、イデオロギー云々を述べている場合ではなかった。彼はきっとこう思っていたのだろう…自衛隊に今ここで究明養成でもして見ろ、自衛隊は負の遺産であるとか何とか述べてきた自分の言動に反すると指摘されてしまうだろう、と。指摘してくるようなバカは相手にしなければいい。少なくとも、イデオロギーをひん曲げてでもあの時は救命に行かせるべきだった。そんな見殺した、命の数々がそこに、光っている。
…あれ、今日は全然ルミナリエの季節ではないぞ?そう思ったとき、その霊たちは言うのだ。
「霊は復讐する能力を持たないからただいることしかできない。ただし、寂しいから仲間を増やしたいのだ」
死んだ人たちはもっと多くの仲間がほしいのだ、という。死んだ人もみんながみんないい人ではなかったかもしれないし、だけどそれを問うのはナンセンスすぎた。そんなことを言ってはいけないのはなぜかくらいわかるだろう?だってそんなこと言ったらいろいろ指摘されるべき点がでるから。
1.お前はいい人だと自信を持っていえるのか。
2.たとえ悪人だったとして、天災に巻き込まれてさえも悪人として語り継がれたいか
3.死んだ人にそもそも失礼ではないか。どんないやな奴でも死んでしまうときはきれいに見送るのが筋と言うものだろう。
僕も心の中では少しそんな不謹慎なことも考えたけれど、そんなの亡くなった人に失礼だ、とかみ殺してきたのだ。それなのに。霊はあっけらかんと言ってくれる。返答に困るようなことを、あっけらかんと言ってくれるじゃないか。
「そろそろ…台風でも呼ぼうかな」
驚いて携帯で天気予報を眺めると、そこには発達中の熱帯低気圧があった。
作品名:BSS81 Far East 作家名:フレンドボーイ42