指 恋
長井医師の弟が発症したのは、弟が中学に入ったばかりの頃だった。4才上の長井医師は当時高校2年生。
「兄さん、僕の病気って……」
察しのいい弟は自分の病気が難病である事に気付くのが早かった。
「大丈夫。今はなんともしようがないらしいけど、俺がなんとかするから!」
「なんとかって?」
「医学部に進学して、研究する。そして、お前を治してみせる!」
両親は早くに事故で亡くしてしまって、二人きりの家族だった。大切なたった一人の弟を訳の分からない病気で失ったりするのは我慢できなかったのだ。
「すぐにどうこうなるって病気じゃなさそうだから、大人しく待ってろ」
「うん」
弟の看病をしながら大学を受験。見事トップクラスの成績で合格し、奨学金で大学・大学院と過ごす。希望通り、例の病気の研究に携わる事もできた。
そんなある日。
「兄さん! 見て!」
自分との連絡用にと渡しておいた弟の携帯に、自分以外からメールが届いていた。