指 恋
窓の外を眺めながら、那由がメールを送信する。
姉の死から1年が過ぎていた。メールは相変わらず続けられ、那由は……病院にいた。
高校を卒業した春の事だ。
仲のいい友人達との卒業旅行の最中、那由は不意に意識を失った。
気付いた時は病院のベッドの上だった。
「那由ちゃん……」
傍らには、泣きはらした母の顔。
「お母さん。私、どうしたの?」
再び泣き出した母の横で、父が那由の膝をブランケットの上から優しく叩きながら口を開いた。
「永久(とわ)の病気の事は知ってるね?」
永久とは、姉の名だ。
なんだか難しい名前の病気で、昨年、他界した。
抵抗力が少しずつ失われていくという原因不明の難病で、未だ、効果的な治療が見出されていない。
それを発症した。と、父から告げられた。
「それじゃ、大学は?」
那由の問いに両親が首を振る。
ウィルス性ではないので感染の恐れは無いが、いつ倒れてしまうか分からない。何よりも、どの位の速度で抵抗力が失われていくのかが検討もつかないというのだ。だから、入院するしかなかった。
「罰が当たったんだわ」
姉との約束を守らなかったから……。
入学の決まっていた大学への進学も断念し、那由は姉のいた病院へと移った。