BSS82 ハニートラップ
さて、用意されたハニートラップ要員の彼女は、その政府筋をひっかけようとした。そして万事うまく進み、ばれれば大変な騒ぎとなることをしてしまった。妻子もいるのに。しかも日本に浮気相手まで残しているというのに。こう言うところにはカメラが当然仕掛けてある、なんて普通言われなくても判りそうなものだが、田淵は気づかないようであった。
「こりゃあうまくいきそうですぜ」
「ああ、バカな日本鬼子(日本人に対する蔑称である。第二次世界大戦時の日本人のイメージ、を元に言っているそうであるが、もはや隔世の感とも感じられるような世代の多くなった現代においてもなおそれが今の日本人なのだ、と教育する中国共産党が、他方で日中間の友好を説くのは訳が分からない)だぜ」
「さあ、て、ついにいいところを…これは脅すときが楽しみです、ぜ」
「そうだな…ん?」
急に部屋の中が火に包まれる。逃げようとした女が田淵に捕まって逃げられないなか、火は瞬く間に部屋を包み、ついにカメラとの交信も途絶えた。
焼け跡からは確かに田淵とハニートラップ要員の白骨遺体は見つかったが、カメラも焼けてなくなり、根拠ある説明はできなくなってしまった。類推はされるだろうが、うまくどうとでもとれる状況にあって、それでは脅しをかけるなどほぼ不可能である。
「まさかあいつも死ぬとは思ってなかったでしょうにねえ」
「まったく…わざわざ引っかかって楽しむためにきた日本人とか初めてだぜ」
「なんか流行りそうで怖いのですが。女たちもやはり人間ですし」
「…主席のお偉いさんに掛け合ったらどうだ」
「…やっぱり遠慮しときます」
「賢明な判断だ」
作品名:BSS82 ハニートラップ 作家名:フレンドボーイ42