BSS64 Leaves
彼が栽培しているのも、もっぱらマリファナであるようだ。「マリファナは流通経路が昔から多かったから、それが原因で麻薬の代表格なんだろうね。MDMAとかLSDとかと違って、俺みたいな不器用な奴でも、栽培するだけで簡単に作れるし、さ」しかし彼は自分では吸わなかった。人に売る代物、として栽培していたのだ。それは彼自身はトリップなんかよりも、売った後に残る金で贅沢するのがむしろおもしろいことのように思われたからだ。「あんたもやるなら売る方を選びなよ。なんでって?愚問だな…こんなもの吸ったってしょうがないだろ?」…そんな彼は今日もマリファナを売っているのだが、売るのはもっぱら知り合いと、そいつ等に紹介された一部の人間だけだ、という。彼は当然だと心得る。「あんただって売っていることで警察に摘発なんかされたくないでしょ?だったらこれは守らないと、ね」
しかし、売れる部分(シンセミアなどのトリップ効果の強い部分)に比べて、俗にリーフ(マリファナの葉っぱのこと)と呼ばれるものはただ同然となってしまう。なぜなら、リーフでのトリップ効果は低いからだ。そんな中、いつも懇意にしている客の1人が、そのリーフを大量に買い付けたので、彼は驚いたが、それを金にできるなら金にする方が得策なので売った。それを使う場所もよく見あたらなかった。
ある日、なんでもないように思える男が逮捕された。「ふーん、郡山輝彦、リーフ所持かよ…ばっかじゃねえの」
そのとき、点と点が線でつながった気がしてその客に電話を入れた。「ああ、その通りさ。あいつは俺の前の事業所の所長なんだけどよ、まったくよ、俺をリストラなんざしやがって…これであいつの社会的信用は落ちたぜ、くっくっくっ」
その次にリーフを買い付けたのは別の男だった。その日の夕方、女性が急に捕まった。料理屋は逆に自分の料理に隠し味として投入し収益アップを実現した。こうして、無用に思えるものを有用に活用するビジネスが、また一つ開拓された。しかし彼はとたん怖くなった。自分は儲かるからよいかもしれない。しかしなんの罪もなく所持などで社会的信用を失った連中に自分のことを知られたとしたら…。あるいは、今自分が食べているものにそれらが混入していたら…?
作品名:BSS64 Leaves 作家名:フレンドボーイ42