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Twitter短文まとめ

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 あの男が嫌いだ。似た者同士と周囲は言うが、似たタイプだからこそ張りあわずにはいられない。
 ゆうべも偶然飲み屋で顔を合わせ、意地の張り合いの末酒飲み勝負になって、その後の記憶がない。そして今、奴と俺は何故か裸でベッドにいる。ああ、これだから、俺はこの男のことが大嫌いなのだ。
(お題:犬猿の仲)


 出勤の支度の時、君は僕のネクタイを締めたがる。最初は夫婦のようで気恥ずかしかったけれど、毎日そうしてもらううちにもう慣れた。
 夜帰宅すると、君は必ず玄関先で出迎え、自分が締めたネクタイを乱暴に引き寄せ僕にキスをする。
 そう、これは僕らにとって、きみの所有物であることを証す首輪なのだ。
(お題:首輪)


 子供じみている。
 先を歩く彼女の背を見ながら私は思う。一年上の先輩は、同級生の少女たちと朗らかに笑いながら通学路を歩いている。その後ろを、私は一人で歩いている。
 子供じみている。
 学年が同じなだけの友達にさえ嫉妬するなんて。彼女が私に気づいてくれるのを、毎朝ただ待っているだけなんて。
(お題:百合)


 女性なら普通かもしれないが、ハンドクリームを年中常備する男は少し珍しい。仕事の後、家事の後、寝る前と、結構頻繁に使っているようだ。背を丸め手にクリームをすりこむ姿が妙に可愛くて、意外とマメだなとからかうと、だって、と彼は口を尖らせる。かさかさの手じゃ、お前の手を握れないからな。
(お題:ハンドクリーム)


 偶然すれ違っても姉さんは決して私を見ない。だから私も彼女を見ない。
 優等生の姉、不良の妹、正反対の姉妹。校内で出会っても挨拶も交わさないふたり。
 誰もがそう思っている。貴方たちは知らない。彼女の吸った煙草の吸い口の口紅の色。誰にも秘密にしている、彼女の顔。私は知っている。私だけが知っているのだ。
(お題:姉妹)


 鉱物マニアの彼は旅行から帰ると、毎回石を持ち帰る。今日もらったのはカンラン石だった。
 覗き込むと、半透明の石は光を透かしてオリーブ色に輝く。星みたいだと言うと、お前にやるよ、と彼は嬉しげに言う。
 ただの石ころだ。でも彼がくれたものだ。こうして俺の部屋の棚に少しずつ、星が増えていく。
(お題:土産)


 沈黙が重い。
 彼は先程から無言で朝食を食べている。味噌汁、ご飯、おかずとつつく箸遣いがきれいだった。
 「昨夜のことだけど」
 呼びかけると彼の箸が止まった。
「俺はお前と、ずっとああしたかった」
 彼は答えずに、最後に残った沢庵を猛然とボリボリ噛み始めた。顔が耳まで赤かった。
(お題:沢庵)


 不意に大きく車両が揺れた。電車の震動に眠気を誘われ、隣の肩にもたれてついうとうとしていたようだ。
「ごめん。重かったろ」
 彼は首を振る。
「駅はまだ先だ。まだ寝ていろ」
 もう眠くはなかったが、俺は彼の肩に寄り添い、目を閉じて寝たふりをした。電車を降りるまで、こうしていられるだろうか。
(お題「眠る人とそれを見つめる人」)


「よくできました」
 プリントに目を通し終え、先生は微笑む。ああやはり素敵だ。家庭教師の先生の切れ長の目は、笑うと眦が下がって印象が可愛くなる。
「これなら合格できるよ。頑張ってね」
「ありがとうございます」
 ああ、先生、ごめんなさい。俺は本当に嘘つきです。もし受験に落ちれば、もう一年先生と一緒にいられるかも、そんなことを考えているんです。
(お題「受験生の勉強中」)


 煎餅を齧りながら、画面を眺め内心でため息をつく。
 借りてきた恋愛映画のDVDは正直ハズレだ。二人で見るからと無難なチョイスをしたのが失敗だった。平凡な話に退屈しつつ、せめて好物の塩せんべいをもう一枚と手を伸ばしてぎょっとした。
 隣に座る男は盛大に鼻をすすり、今にも涙をこぼしそうだった。
(お題「煎餅を齧る」)


 互いに裸なので布団の中は少々蒸し暑い。彼はまだ口を開け軽くいびきをかいている。ベッドの端から足がはみ出ていた。
 やはり狭いなとあらためて思う。互いに密着していないと落っこちそうだ。
 困るのは密着が決して嫌ではないことだ。果たしてダブルベッドを買うべきか、買わざるべきか。
(お題:ダブルベッド)


 姫君の誕生日に、若き騎士は必ず花を持ってやってくる。
 何年も前に幼い姫君が、誕生日にはお花が欲しいと駄々をこねたからだ。騎士は律義にそれを覚えていて、以来必ず贈り物に花をつけて渡してくれる。今年は白い花だった。
「これはなんという花?」
「さあ」
「『さあ』って、あなた」
「名前は知りませんが、姫様に似ていたので摘んできました」
 姫君は思わず、手の中の繊細なつくりの花を見つめる。つまり騎士の目には、姫君はこう映っている。可憐で、壊れやすく、純真無垢な白い花に。嬉しいけれど、反面ひどくせつないのは何故だろう。
 ねえ、貴方、私はもう十二歳になったのよ。
(お題:少女と青年)
作品名:Twitter短文まとめ 作家名:MYM