ラブ・レター
機嫌良さそうなあの人の手には一通の手紙。
大事そうに持っていて
それは何?と聞くと
微笑んで“ラブレター”と言った。
その微笑にムッとして、誰から?と尋ねれば
かわいく唇に人さし指を当てて
ヒ・ミ・ツと囁いた。
すやすやと穏やかに気持ち良さそうな寝息を立てて歩(あゆむ)さんは隣で眠っていた。
起きないことを確認して俺は布団から出ると机からペンとレポート用紙を取り、再びベッドへ。
左手にペンを持てば準備完了
胸に募る、とまではいかないけれど素直な気持ちを手紙に書き綴る。
ちらりと横を見れば、愛しい人の寝顔があって思いはさらに増幅して
文字の量が次から次へ増えていった。
「なにしてんの?」
「ひえっ!?」
紙の上に集中していた俺は突然かけられた声に驚いた。
「なんて声だしてんの・・・」
歩さんは少し呆れた様な声を出す。
「だ、だっておまえ。」
「ね、それでなにしてたの??」
歩さんは腕で上半身を支え体を起こすと、興味津々と言った表情でこちらを見上げる。
「ヒ・ミ・ツ」
さっきの彼をまねて言ってみると、真似されたほうはぷくっと頬を膨らました。
その様子がめちゃくちゃ可愛くて、つい見惚れていると
その隙に目の前の恋人は俺の手から手紙を取り上げた。
「あ!おまえっ!」
「なーに、これ・・・・」
歩さんはレポート用紙の中を読み始めた。
「ツナ・・・これ。」
そういうと、ほんのりと頬を染めて手紙と俺を見比べる。
「ラブレターってやつですよ。」
照れくさくって小声で歩さんの耳元で囁いた。
「なんで?」
「だって歩さんが誰かからラブレター貰ったって言うから?
俺も書こうと思ったんですけど。」
それを聞くと彼はクスクスと笑い始めた。
「ど、どうした?」
俺の質問には答えず、歩さんは俺の持っていたペンを取るとさっき持っていた
封筒の白紙になっていた宛名と送り主のところへ名前を書いた。
「はい。」
そうして手渡された封筒の送り主は“町田 歩”。
そして宛名のところにあった“田奈 秀綱”の四文字に顔が赤くなる。
「歩さん・・・これ・・・」
「誰かからじゃなくて、僕から誰かさんにってこと。」
ちょっと照れくさそうに笑う年上の恋人が可愛くて、思わずぎゅうっと抱きしめた。
「ねぇ、なんで突然ラブレター?」
「ん?あぁ、あのね家でレターセット見つけて書きたくなっちゃって。」
「で俺なわけ?」
「うん。思いついたのがツナだった。」
また可愛いことを言う恋人を強く抱きしめた。
「可愛いなぁ。」
「なぁに、いきなり。」
「大好きだ~」
「はいはい。」
「愛してるぅ」
「はいはい。」
「あとでその手紙読んでね」
「はいはい・・・ってえぇっ!?」
歩さんからのラブレターを朗読してもらって、さらに舞い上がっちゃったのはその後の話。