サヨナラクラスメイト
奈良とは4年からのクラスメイトだった。
といっても最初から仲良かったわけじゃない。
4年の時は所謂クラスメイトって関係で、たまーに話すくらい。
今みたいに一緒に弁当食べたりだべったりするようになったのは、5年に上がってからだった。
「飛鳥さぁ、鎌倉しらない?」
5年になって初めて奈良からかけられた言葉。
おとなしそうな見かけとは裏腹に生徒会長になった彼は、各委員長をまとめる役職についた。
そんな彼はこちらもまた、あの暑苦しさとは裏腹に保健委員長なんかになった鎌倉を役員会議に引き出すために僕の所にやってきたようだ。
「鎌倉?知らないな~。ていうかなんで俺に聞くの?」
あいつとはクラスも委員会も部活も違う俺に聞くのはなんだかおかしい気がして尋ねてみると、奈良は至極当たり前だというような顔をした。
「だって飛鳥と鎌倉、仲良いじゃん」
「は?」
「鎌倉が休み時間になればいつも飛鳥のとこにいるのは仲が良いからだろ?」
「…………」
(あの猛烈アタックは余所から見たら仲良しさんの図に見えるのか…)
考えもしなかった現実に思わず頭を抱える。
鎌倉とは友達として仲が良いわけじゃない。
というかあいつは、俺と友達になりたくて仲良くしてるわけじゃない。
なんて言えば奈良を困惑させるだけだと思い、ぐっと言葉を飲み込んだ。
世の中には口にしないほうがいい事もある。
「……少なくとも俺のとこには来てないよ。部活じゃない?」
鎌倉との仲にはあえて触れずにそう伝えると奈良は納得したように頷いた。
「あーそっか!道場行ってみるわ。ありがとう」
まったく今日は会議だってあれほど言ったのに…と奈良はぶつぶついいながら教室を出ていった。
頑張れよ~なんて手を振って言いながら俺はほっと息をつく。
奈良には変な誤解をされずに済んだようだ。
鎌倉との位置関係を知られ、かつ奈良が鎌倉の味方についたら少し…いやかなり厄介なことになる。
それだけは回避出来たようで安心して昼飯のあんぱんに噛り付いた。
するとさっき出ていった奈良が扉から顔だけのぞかせ
「いい加減鎌倉の気持ちに答えてあげたら?」
と苦笑いを浮かべながら言うとまた教室を去った。
ぼた………
その一言を聞いた瞬間、俺の昼飯は無残にも地面に食べられてしまった。
あぁさよなら、あんぱん
あぁさよなら、俺のクラスメイト
作品名:サヨナラクラスメイト 作家名:米すけ