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ほろ苦い味がした

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さよなら、と言われた。
あなたがどんな表情でそれを告げたのかはわからない。
だけれど、あなたの言葉は怜悧な刃物のようにすっと私の心を切っていった。


「さよなら、です。」
「どうして、なぜ、」
「なぜって、」



ふ、と風が微笑った。
にっこりと、それ以上の追求を避けるように、有無を言わさぬ笑顔で。



「それは貴女が、」



とん、と、指先が心の臓を軽く突いた。
どくんどくんどくん、と心音が早まった。嫌な、予感が胸を過ぎる。



「嫌いだから―――」



聞きたくなかった言葉が鼓膜を揺らした。
その間もあなたは綺麗に、綺麗に微笑んでいて。
なんて残酷な笑顔なのだろうか。
こんなにも、綺麗なのに。



その笑顔が、ふと歪んだ。
眉根を寄せ、眉間に皺が寄る。


「―――嫌いに、なったのなら、どんなに良かったことか。」
「では、なぜ、」
「殺したいほどに好きだから、さよならなのです。」



貴方をこの手で殺める、その前に。
私の目の前から消えてください、と彼は呟いた。


「あなたに、殺められるのであれば―――」


微笑んだ。
彼が、涙を零すのがわかった。


本望なのです。
恋に殉ずるのならば、本望なのです。
そう言えば、彼は力無く、微笑った。



冷たい風が二人の間を過ぎった。
作品名:ほろ苦い味がした 作家名:Ritsu