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オレンジ色-第四章-

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真実



「…夕方部はね、クラスに馴染めない人たちが集まっている部活なんだ。隣にいる部長が作ったの。」いつものような高い声ではあるが、言葉の口調と周りの雰囲気も彼女の本気をうかがわせる。

「この町の噂話、一番星を見ることができれば、私たちは成長することができるかなって信じて活動をしてるんだ。だから…悠一君を誘った。」悠一は自分がここにいる皆と同じ類の人間だったと知る。完璧にも思える俊介やそういうのに無縁そうな莉奈ですら、悩みや闇を抱えて生活をしている。

「僕はクラスの代表をしてたんだけどね、真面目過ぎたのかな。結果を出すために無理難題をクラスに求めてしまって…。まぁ、認めてくれる人も少なからずいるけど、今までとは違う環境になってしまってね…。」そう隣にいた俊介が告げた。俊介にこのような理由があるように莉奈や他の部員にも理由があるのだろう。もちろん、悠一自身にもある。

「人それぞれ何か理由があると思うんだ。その理由に関しては詮索しない。ただ、解決するには何かきっかけが必要だと思うんだ。」

 そうして選んだのが、夕方部という形だった。一番星を見ることが出来れば願いが叶う。下手なきっかけなんかよりはよっぽど効きそうなきっかけだ。言葉にはしなかったが、俊介は眼で訴えていた。―だから僕はこの活動を始めたと。

 だんだんと日は傾き、とうに夕方5時のメロディは鳴り終わっていた。

「ありがとうございます。」悠一はそう答えていた。その回答に二人はびっくりする。

「え、怒るのかと思ったんだけど。」と、莉奈は言う。確かに夕方部について分からない部分はあった。それを知ることができたし、何より友達ができた。ただの友達ではなく、悩みも打ち明けられる親友だ。別に怒る理由なんてない。と、そう説明した。普段のどぎまぎした話し方とは違い流暢に言葉が発しられた。心の底からそう思っているのだろう。莉奈は、
「そっか。ちゃんと言えば良かったな。でも、良かった。また、悠一君といれるね。」と答えた。その最後のフレーズに悠一はドキっとしてしまった。深い意味はないと思われるのに。心臓はドキドキしたままだ。莉奈への返答も相変わらず言い詰まって、莉奈に笑われた。だけど、その笑顔が嬉しかった。そんな彼女の顔に見とれていると、ふと、後ろから声がかけられた。

「おーい!そろそろだぞー!」

 空には遠くから濃紺の夜空が覆い始めていた。オレンジ色と混ざっていく景色はとても奇麗で、どこか切なかった。夕方部の面々は皆手すりに寄りかかってその方角を見ていた。ふと、隣にいた莉奈が話しかけてくる。

「私ね、心に闇を持った人としか仲良くなれないんだ。」と、意味深な言葉を言う。確かに、莉奈は悩みとかとは無縁でこの部活には似合わない部分があった。

「なぜだか、しっかりした人とは上手く話せないの。夕方部のみんなとはちゃんと話せるのに。…変でしょ?」ほんのり笑顔になった莉奈は悠一に何を求めているのかわからなかった。肯定して欲しいのか、否定して欲しいのか。しかし、悠一にはそんなことを考える余裕もなかった。もし僕が普通になることができたら?莉奈はもう友達でなくなる?それが気になって仕方なかった。

「…あのさ。もし僕の悩みが解決しても友達でいてくれる?」不安もあったが、答えを貰わないのも嫌だった。左に首を向けると莉奈がこちらを見ている。自分の顔はどんな表情をしているのだろう。消えてしまいそうな不安な表情をしているのだろうか。

「大丈夫だよ。ずっと友達だよ。友達になるきっかけは違っても、絆はそう消えるものじゃないでしょう?」にっこりとして、そう答えた。杞憂だったのかもしれない。莉奈はどう考えてもそんな薄情な人間ではなかったんだ。悠一は自然に笑顔になり喜んだ。ただ、ずっと友達だよ。という言葉に少し悲しくなった気がした。夜空はすぐそばまで迫っていた。

続く…
作品名:オレンジ色-第四章- 作家名:こめっち