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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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BSS20 大人になった日

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大人になって初めての日に彼は死んだ。彼が大人になる日を、彼の周りの人間たちは待ちわびていたのであったが、唯一彼だけはそれに気付くこともなかった。否、気づけるはずもなかった。彼は今時の若者にして、まったく携帯電話やパソコン、その他いっさいの通信機器を持たずに過ごしていたからだ。これは彼が地方出身、というのもある、というと納得する人もいれば、憤慨する人もあろうと思う。「地方だからって携帯持っていないと思うな」と。彼が住んでいたのは、ただの地方ではなく、離島だった。故にパソコンと携帯電話の利便性など知る由もなかったのだった。そしてそれ故にコミュニティサイトなどには全く出向くことができるはずもなく、彼が裏で悪く言われていることも知らなかったのだ。
 まじめすぎた、というのが彼の印象か。まじめ故に法律を遵守し、学内のルールも遵守し、およそルールであれば何でも遵守し、そしてそれ故に周りの違反も許せず、それが窮屈となっていた。皆、感じていた。奴さえ消せば、楽園が訪れる、と。皆、信じていたのだった。
 「なあ、森吉、ちょっと酒飲みにいかねえか、お前もうきょうで20だろ?お前も堅かったけれど、もう飲んでいいんだろ?」
 「あ、…うん、まあね」
 「よしいこういこう」
 周りの仲間に半ば連れ去られるようにして居酒屋に入る彼。そして悪夢は始まる。
 酒を次々についでいくなかで、さすがに限界を感じたかトイレに行き、帰ってくるとさすがにもう酒はつがず、安心しきって目の前の料理を食べる。
 そして食べて盛り上がっている間に彼は気を失っていく。
 「さすが酒の味を知らない森吉」
 「いや、気付かなさすぎだろ」
 「まあ、まあいいんじゃねえか」
 「そうだな。よし」
 彼らは最寄り駅まで連れていき、ベンチに彼を座らせ、電車に乗って一駅先に行く。そして戻りの電車に乗り、後ろに立つ。
 彼は少し意識を取り戻したようだ。彼らは必然的に、下がる。そして、次に線路の方向へ歩き始める。そのまま、列をくむと、その方向に彼も来た。暗闇で前にいるのが友人かどうかなどわからない。そもそもどこにいるのかすらわからず前に歩いていく。彼らは彼から離れた。そして、離れてから10分して彼ははたして線路に落ちた。ちょうどタイミング良く電車が来た。客の少ない駅だ。彼らは買っていた見送り用切符を取り出して階段を登っていった。