一輪の花
一面見渡す限り、地平線の果てまで色とりどりの花しかない世界だ。
色がありすぎて、美しすぎて、眼があけてられないぐらいだ。
空は雲ひとつない青空。
さらにそこには大きな虹が、はっきりと見える。
虹は大きすぎて、片方の足がどこまでいってるのか見えない。
そんな世界に花のない、小さな丘がある。
その丘は芝に覆われているだけだ。
その頂上には石でできた小さな十字架がある。
その前には喪服の少女が、この世界には見当たらない花だけを集めた花束を持ている。
「あり……。さ…うな…。」
小さな声でよくは聞き取れなかったが、少女は何かを十字架に向かって言った。
そして、もっていた花束をその前に置く。
少女は終始、悲しげな笑顔を浮かべていた。
そして、青空を見上げて深呼吸……。
少女が丘から降りようと振り向くと、そこには相変わらずに花だけの世界が広がってる。
そこにはありふれた花しかないようにも見える。
そして、こう言った。
「これから、どこへ向かうの?」