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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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BSS93 父親存在に懐疑するところ

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僕は昔麻薬を買いに走っていた。それは父親がそれを欲していたからだ。父親は全く働かない人だから、母親が働いていた訳だが、父親になにも誰もいわなかった。これというのもいわなければ、僕らは快適に暮らせるんだ、それなら何にもいわなくていい、という判断があったんだから、まあ仕方ないと割り切ってほしい。
 別にDVではない父親だ。だったらいいじゃないか、ということになる。大学へ行っても社会人になっても、父はまったく動くことがなかった。
 そのまま僕は家に帰ることがなかった。かわいい女の子と夜に気ままにスポーツカーをとばしたりなんだりして、海見に行ったりしたくらいの、そしてそのまま結婚したわけだが、それはまた別の時の話にしてもらいたいと思う。とにかくそうしてまさしくザ・健全な家庭を持ってしまった故に、子供を父親に会わせたくなかった。というより、父親は結婚式すら顔を見せなかった。あまりのいたたまれなさに新郎なのに顔がこわばり、相手のお父様に「大丈夫だから、きっとうれしいと思っているよ」と、気を使わせてしまった僕は、どうしても、どうしても子供を会わせる気はなかったのだ。
 だが、妻はいう。
 「みんなのお家は、夏のお盆とかにおじいちゃんに会いにおくということをしているのに、亡くなってもいないお父さんに会わせなくていいのかしら?」
 当たり前のこと、当たり前の疑問。…なのだが、あの父親にあってしまったら、僕の子供はどう思うのだろうか、と気が気でならないのだ。
 そのうち、電話が鳴って、父が危篤に陥って、奇特な人生にピリオドを打ったとき、僕はむしろほっとしてしまった。
 あれでよかったのか、はわからない。ただ、そこには父親の姿がなかったことは、少し空虚に感じられてしまう。
 今のことは、子供と昆虫採集にきて、休憩に近くの喫茶でオレンジジュースをゴクゴク飲む子供をみながらブラックをすすって考えたことである。