BSS43 テクネチウム
その話はとてもおもしろいものだった。天然で存在しないとなると普通93番以降の元素ばかりを思い浮かべる(例えばハッシウムとかシーボーギウムとか、果てはウンウンオクチウムとかの、言える人はかっこいい、系のあれですね)が、43番と61番も天然では存在しないのです。欠番扱いなのです。
学校では私はテクネチウム、彼はプロメチウムなのです。
彼はどうして学校に来ないのでしょうか。たまに成績をつけるためだけにテストだけでてきて、そしてなんか知らないけどいつも学年1位なんで、きっと家でガリ勉張っているんだろうだろうなあ、なんて思われるのですが、一度いったところそこは小説が積んであるだけで参考書のたぐいはなく、いろいろと不可思議な男でした。
いくら出席数が足りなかろうと、テストで優秀成績を収める男を落第させるわけにもいかず、学校は出席数をごまかしていました。
彼は大学に入ったようです。海外の学校だというから調べてみたらハーバードだったとか。確かに個性の固まりではありますが、それがハーバードの求める個性とは余りにかけ離れているきもします。何しろ、人と交わらないんですから。
私はしがない三流の大学をでて、それなりの会社に勤めて、結婚どうしようか悩んでいるとその男が浮かんできました。その男に会いに彼のニューヨークの職場に行くと驚きでした。
彼は事務所なんか構えていましたが、自分がやる仕事は量は多いものの時間はわりとカットされ、余った時間を悠々自適に過ごしていました。この男とは友達にすらなれないんじゃないか、と思うほどに。
「そもそも人工元素同士がうまく引き合うはずがないよね」
彼はそういいました。
「両方とも近づく前に崩壊するから」
私は悔しくなって、その日宿泊していたホテルで硫化水素を作ろうと試みましたがそれすらうまくいかず本当にいやになりました。
生まれてこなければよかった。
DVの父親と、メンヘルの母親。
どう考えても、幸せとは思えません。
そんななかで、社会的地位の確保のために生み出された私は、テクネチウムそのものですよね?
作品名:BSS43 テクネチウム 作家名:フレンドボーイ42