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動物の王国~エド、初めての諜報活動~

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その4



「さあぴよちゃん。ここが今日から君のお家だよ」
「ぴよ!?」

黒塗り馬車に揺られて20分程、男の子の両手に大事そうに乗せられて来た所は―――市街地から離れた閑静な高級別荘地、だった。
それも一軒だけの完全私有地。

「今日から、といってもうすぐ帰るから3日間だけなんだけどね。すぐにもっと大きなお家に住まわせてあげるから待っててね♪」
「ぴ??」

もうすぐ帰る&もっと大きなお家&【坊ちゃま】呼ばわり=宮殿なみにでかい屋敷に住んでいる。
と言う事、だよな。
この子、いったい何もんだ? ただの金持ちのご子息様って…感じじゃないよな。よっぽどの高官の子供もしくは孫か。
はっ! まさかハクロのおっさんの子供かっ!?
違うか、年齢合わねっし……名前も違う、しかも全然似てねぇし。

エドワードの脳内では、ただ今この国の重要人物とその家族構成をフル回転で検索中だ。
と、そこへ決定的な情報が入ってきた。
屋敷から執事のような年配の男性が迎えに出てきて一言。

「セリム様、ハクロ陛下が先ほどからお待ちでいらっしゃいます」
「もう少し待ってもらっていてよ。僕、ぴよちゃんをお部屋へ案内するんだから」
「はい、そのように申し上げておきます」

セリム。
セリムセリム…………………ん?セリム??
も、もしかして。

「ぴっぴっ、ぴよっぴぃ~~!?」訳) セリム・ブラッドレイか~~!?
「どうしたの、ぴよちゃん?」
「ぴ、ぴぃぴぃっ」訳)な、なんでもないっ

別に言い訳なんかしなくても、セリムにひよこの言葉が分かるはずもなし。しかも。じつは羽毛に隠れて冷や汗タラタラ、何てことも内緒だ。でも心配しなくても、セリムには小さな黄色ひよこが一生懸命さえずっているようにしか聞こえないけれど。
「へへ。ぴよちゃん、本当にかっわいいvv」
セリムはご機嫌そのもの。
スキップしながらエドワードを掌に乗せたまま屋敷の中へと入っていったのだった。


ちょうどおやつの時間なのか、セリムの前には色々なケーキが並んでいて。で、エドワードには、もちろん【ひよこ用の餌】が急遽用意された。
用意されてはいたが、エドワードはお腹が減っていた。目の前のその向こうにある、フルーツてんこ盛りにチョコレートコーティングetc。色とりどりなケーキがとっても美味しそうで堪らない。
変化後はそれにあわせて、その動物の主食も食べられるようになるのだが、エドワードは王族、しかも第1王子で国を挙げてのアイドル様だ。はっきり言って贅沢に慣れてしまっている。
【ひよこの餌】よりケーキなのだ。

「ぴっぴぴっぴぃ~~!!」訳)いっただきま~す!!

いきなり皿を飛び越えケーキにダイブ。気が付けば、生クリームの海を思う存分泳いで堪能してしまっていた。
しっ、しまった!
と慌てても時すでに遅し。
(何処の世界にケーキを食べるひよこが居るってんだよ、俺!)

目を大きくして驚いているセリムと側近を何とかしなければいけない。とりあえず、ケーキの上に乗ったまま生クリームにまみれながら、「ぴ、ぴよⅴ」訳)え、えへⅴ
小首傾き角度25度。
【ハートマーク付きで小首を傾げる】を繰り出してみた。

「か、かわいい~~vv」
「はい、大変お可愛らしゅうございますv」
瞬時にセリムと側近の目がハートマーク仕様に様変わり。さすが全生物対応、効果てき面率120%を誇るエドワード王子必殺技だ。とりあえず窮地脱出。

「ぴよちゃん、ケーキ好きなの?」
「ぴよvv」訳)うんvv
「僕も!ふふ、一緒だね~v」
しかも、セリムは何だか大喜び。

「でもこのケーキじゃ大きすぎるよね」
「では、プチケーキをお持ちいたしましょう」
さらに、側近までエドワードに気を使ってくれる始末。

そして、忘れられている人が一人。

「セリム様はまだなのかね?」
「ただ今、おやつのお時間ですので」
「………私は昼過ぎから待っているのだが」
「セリム様はおやつのお時間です」
「………わかった」

執事の有無を言わせない迫力に、(私はこの国の王なのに…)と、ちょっと卑屈になるハクロ陛下であった。

そしてその頃。
あれ?……そういえば!?
ハクロ陛下がお待ちですって、言ってなかったっけ??

自分専用のプチケーキをモグモグ食べながら、エドワードは重要な事を思い出した。
思い出したのでセリムを見てみれば。
「美味しいね♪」と、未だ音符付きのおやつタイム中。
エドワードは確信した。

やっぱり、間違いねぇ。
この子はキングの一人息子、セリム・ブラッドレイだ(似てないけど)。

ハクロ陛下とは、いわずもがな「ハ・クロー王国」の現国王。その一国の国王を【おやつの時間】という理由で待たせる事ができる者なんて、そうそういない。
できるとすれば、あの国の統治者とその家族だけだ。
そう、この国は一国の形を取ってはいるが、実はキング共和国の属国にすぎないのだ。

キング共和国―――大総統キング・ブラッドレイが統治する巨大軍事国家であり、近隣諸国に与える影響力は絶大のものがある。
そして、セリムはブラッドレイが50歳の時にようやく恵まれた息子で、とにかく溺愛されているのだ。
ハクロがその一人息子のセリムに、頭が上がらないのも仕方がない。

まずは外堀を、と思いこの国を探りに来たというのに。
まさか、いきなりVIP人物の愛息子に近づけるとは、思いもよらない幸運なイレギュラーだ。
でもエドワードをはじめ、皆が知らない意外な事実が隠されているのだ。
実は、ホーエンハイム王とブラッドレイ閣下は個人的に懇意にしていたりする。密書ならぬ文通をしていたりとか。
二人の愛息子の自慢話に意気投合、花が咲きまくりなのだ。

その閣下ご自慢の愛息子が言いましたよ。

「僕ね、好きな人がいるんだ。ぴよちゃんには特別に教えてあげるよ」
「ぴ?」
「これはね、お父様にしか言っていない秘密なんだ」
「ぴぃ」
にっこりと笑う表情が何とも子供らしくて可愛らしくて、エドワードも一緒に微笑んでしまう。ひよこだけど。

ひよこの俺に好きな人をこっそり教えるなんて、発想がお子様だよなぁ~。ま、10歳だもんなあ、可愛いよな。

「僕の好きな人はね―――」
「ぴぃ」訳)うん
「アメストリス王国、第一王子・エドワードさんだよvv」

はい??

小首をかしげたまま、エドワードは固まってしまった。