小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

BSS18 嫌とはいえない依頼

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「はい、確かに承ります」
 彼は僕のことを一度だけみてそして現場に赴いた。リターンはいいが、リスクも高い。しかも仕事内容に関わらず断れない。そんな損な仕事が世の中にはあります。
 仕事内容は至って簡単。給料もボーナスもおよそこんな仕事には高すぎるほどでした。ただリスクを勘定に入れると、異常なほどやすいと感じる。
 「開けてきました」
 もし僕らが大手の、それも「鍵屋」の会社に勤めていれば、断ることも可能です。犯罪性につながるものはお受けできません、と言えます。
 でもこの会社は、事業はいろいろやってますけれど、何一つきれいなお仕事がないんです。役員には犯罪者・詐欺師・暴力団OBと肩書きのすごいのが並びます。トップは有名大学の有名サークル出身で、かつてよりぶっ飛んだ数の人間のお手伝いをしてきました。断れば文句を言いに威勢のいい若い連中が来るので断るわけにはいきません。電話で断ってよいのは、むしろ普通の客です。
 こんなブラック企業も、給与だけは異常に高いので毎年応募が殺到します。毎年悪魔が生み出される、というか悪魔じゃなくて天使に寄生するパラサイト・ワームですけれど。女の子とかこの職業じゃ恥ずかしいことしか用事がないみたいですよ。ちょっと不細工とかいわれるとすぐ整形させられます。40とかいくともう会社にいれなくなります。自己都合退職していきますよ。退職金もでないそうですし、正直上に上がれるのは男だけですよ。僕らは男だったからこそあがってますけれどね、本当に何だかなあ。
 まあ、仕方ないし、やりますよ。で、本田さんのところに、ジリリとではなく(なんで小説では電話の音がジリリリリンなのか誰か知りませんか)、トゥルルルと電話がかかってきたわけです。本田さんはあの客もうイヤだという顔をしているので、彼には一度仕事を変わってもらった借りがあるので、代わりのものを用意するという形で僕が派遣されます。本田さんは、別に平等にただ単に借りを返すだけなのに、何度も何度も、彼は「悪いな今西」と言うので、それほど今回の客は怖いのか、と思いました。
 しかし本田さんの場合は時間が経つのを待ってチャラにするわけにはいきません。彼は本当にいい人であり、その人のしてくれたことを、仇で返すことだけは絶対にしたくなかったのです。まあ、そういう感じでいろいろな人と仕事のやりとりしているせいで、僕を含め多くの人はやめられないんですけどね…本当にひどい話ではあると思いますよ。たぶんお隣の国ではうまくいきませんよこんなブラックな不文律。…そんなわけでまあ、仕方なくでると、やはりというべきか、おきまりの展開である訳ですねえ。少しくらい期待を裏切ってほしいものですよ。だってよく考えてくださいよ。本当にねえ。みなさんもわかりますよね、僕の言っていること。
 誰がこの場でヤクザな皆様と会うことを楽しみにしているでしょうか?それもまた今回はひと味違って「○○組傘下組織の××会」ではないんですよ。「○○組」なんですよ。いわゆる大本、総本山、別の言い方をすれば根元、元締め。これはもう疲弊するしかない仕事です。失敗しなくても遅ければ早くしろと怒鳴られ、遅すぎればこめかみに銃を突きつけられます。いくら自分は撃たれないというこの法治国家ならではの命綱があるとはいえども、生きた心地はしませんって。で、まあ、スピードには関係なく報酬はちゃんと値下げせずに払ってくれるので、僕はもっぱら正確性を重視してやります。後輩にもそう教えます。そうじゃないときっと失神してしまいますよ、パニックでね。
 で、今日開けたのがまた最悪なんですよ本当に。暴力団のボスさんが言うことには、なんか若いのがお金を使い込んじゃったらしくて、そこで逃げればいいものを(僕の率直な感想です)、何でかしらないけれど、立てこもって無駄にいろいろかぎつけちゃってあかないって言うことです…。ふ・ざ・け・る・なぁ…!とにかく目つきが怖いなこの人は。
 鍵屋がスーパーの南京錠くらい開けられないわけではありません。だいたい南京錠なんて最悪、ペンチで壊してしまえばいいんですよ。その方がスムーズです。だから、壊しちゃいますよ、と一応確認をとって、それでいいとおっしゃるので(怖いとついつい尊敬語になるよなあ)、ペンチで片っ端から壊していきます。ちょっと固いのもありますが、別に僕だって軟弱じゃあないんですよ(この強面の集団よりは遙かに弱いけれど)。問題は開けた後ですよ。開けた後。もうみなさんもわかりますよね?
 中にいるんですよ、ピストル持った人が。私は開けた瞬間に身をよけました。ドアの隙間から、弾がドキュンドキュンと飛んできます。ひどい話だ。こっちだって商売で仕方なく開けているって言うのに、損なことは相手はお構いなしときた。まあ、結局相手の弾切れを待って突入したみなさんのおかげで一命を取り留め、ちゃんと報酬をもらいましたが(しかも色付きで)、それでも死ぬかと思いました。
 上司及び本田さんは絵は君の給料に付ける形で渡すから(普通報酬をもらっても一回まず預けて、それから支払う形になっていますが、会社ですからそうしないとおかしいと言えばおかしい)と言ってくれましたが、それでも対価が見合わない気がします。
 嫌だとは言えないから仕方はないですけどね。日々厭世感が強くなる。「俺、現場作業から幹部になったら、結婚するんだ…」という言葉が、頭の中でエコーして聞こえてきます。
 そこの君、企業研究しよう、な?