少女の日記 3
退院してからしばらくは放心状態だった気がする。
病名、病気の進行状況などは教えてくれなかったが、この体は私のものだ。
大体予想がついてしまう。それもとても悪い方に。
初めてかもしれない。
自分が死ということに直面することは。
自転車で転んで、頭を打って死ぬかもしれない。ということは勿論あった。
しかしそれとは別に自分が確実に死に近づいてる感覚。
この感覚が芽生えてきてから、放心状態は薄れていった。
私は諦めているのかもしれない。
部屋ですることといえばたまに母さんが買ってきてくれるファッション雑誌に目を通して、学校では今こんな授業してるのかな、と思いを馳せる。
そんな日を送っていた。
5
時期はもう夏休み。
私の布団も、もうフカフカした羽毛布団からタオルケットに代わった。
母さんは「昼は暇だからパートをするわ。」という理由で私が中学に上がった頃から仕事をしている。
そして今日もまた11時ごろにリビングに降り、朝食を取ろうとした。
が、自分の曜日感覚がズレていた。
扉をガチャ、と半開きにした途端だった。
明るい話し声が聞こえた。
「ですよね!!!朝はごはんですよね!」
「そうだとも!パンは邪道だ!」
「んもーっ最近クラスのやつとかはほとんどパン派ばっかで大変なんスよ!」
「ところで・・ク君君は目玉焼きをオカズとしてご飯が食べれるかね?」
「もちろんっすよ!卵焼きも歓迎っす!あ、おじさんは卵焼きはダシ派ですか?」
「君もかね!?私はどうしても甘いのは食べれんのだ!」
父さんとその見知らぬ人は握手をして、その後抱きしめあっていた。
そうして朝ごはん談義?が閉幕していった。だが一人は見知らぬ人だ。
まぁその光景が曜日感覚以前にすごい光景が目の前に広がっているのだがスルーする。
しばらくぼーっと眺めていると、知らない人が私に気づいたらしい、漫画っぽくぶふーっと吹いていた。
リビングのほうで、おわあっ!という叫び声も聞こえるが、まだスルー。
とりあえず自分の部屋にかけあがった。
まず自分の頭の中を整理することに、全身全霊の力を込める。
頭の中で整理するはずだったが声に出てしまっていた。
「ふぅ、まず今日は月曜ね?母さんと父さんが家にいてもおかしくない。」
「でもあの人はだれ?」
そう。リビングに知らない同年代か年下に見える人が父と仲良く朝ごはんを食べていた。
これが彼と私の微妙すぎる出会い方。