BSS22 戟
「さてと」
目の前には一つの犬の死体。そして後ろには猫の死体。あなたはどちらの墓を作るだろうか。どちらも、なんて答える奴は死んでいい。どちらか、と訊かれたらどちらか一方だけを答えるのが筋だ。異論は認めない。
僕は猫などどうでもいい。犬こそがジャスティス。正義だ。忠義を尽くす犬の方がすばらしい。
化け猫なぞ怖くはない。猫は恨み辛みでやってくるが、僕にしてみれば怖いところはない。僕の精神力をなめてはいけないよ。
そう考えていたら少女が猫の墓を作っている。かわいそうに。きっと将来悪い男にたぶらかされるんだ。
「勝手なことを考えないで」
人の心を読まないで。
「猫はかわいいのよ。犬なんて獰猛にしか見えない」
実際はその逆だがな。
「ふんっわからないなら結構よ。死ねばいいさ…かわいいからこそ正義なのよ」
何を言うんだお嬢さん。
「わからない?私は現代っ子なのよ」
…理解できたよ。納得はできないけれど。
「そんなにイヤなの犬派さん」
イヤだよ猫派ちゃん。やっぱり中身が重要だと思うなあ。皮一枚剥げばみんな、同じだよ。
「最悪ねえ…でも誰にも共感得られそうにないけど」
無いね。確かにね。別にいいけどね。
現代人はバカだと思うよ僕は。
「残念な人ね…時代に押し流されて文字一つ残せずに終わるんでしょうね」
ふふふ…それは君もだよ。
「えっ」
君も、文字一つ残せずに死ぬよ。同じ死に方するなら、中身がいい方がいいけどなあ。
「どっちも、は駄目?」
駄目。