人間屑シリーズ
一日目
七日後に俺は死ぬ。
正確には、殺されるのだが。
といっても、それは自ら望んだ事であり、今では残り限られた人生における唯一の希望となっている。
数日前、俺の携帯に一通のメールが送られてきた。とはいえ、俺にはメールを送ってくるような近しい存在など有りはしない。
友人などいるはずも無く、彼女どころか二十六年間童貞を守り続けてさえいる始末。
大学を出て働いてもいたのだが、同期の人間が俺の陰口を叩いているのを偶然に聞いてしまってから、何故か無性に色んな物が怖くなり、以来ずっとこのボロアパートに篭っている。甘えだと思う。だけど自分でも分からないが、とにかく急に怖くなってしまったのだから仕方が無い。あるいは、仕事を辞めるきっかけが欲しかっただけかもしれない。
しかし、そんな風に思えるのは死が間近に迫った今だからこそで、ほんの数日前まではそんな言い訳にすら目を背けて生きていたのだ。
両親とも、もう何年も会っていない。だが、それも問題ないだろう。俺には優秀な弟がいて、アイツに任せておけば何も問題ない。
本当に、俺という存在は世の中から消えても、何も問題などないのだ。なのに……俺は今日もこうして生きている。
会社で同期の人間が俺に対して言っていた言葉「死ねばいいのに」……本当にその通りだと思う。
だけどチキンな俺には自分を殺傷する根性などないのだ。引き篭もって早三年。貯金も底を尽きかけ、俺は死ねないから生きているだけだった。
そんな俺に突然のメールである。
正直、メールの着信音にすらビビった。出会い系か何かだろうと思いつつも、鳴らなくなって久しい型の古い携帯をじっと見つめた。いや――本当はずっと何かと接触したかったののだろうか? ……分からない。
何ヶ月かぶりに携帯を触り、何年かぶりにメールを開く。そこには見知らぬ差出人からの、ある提案が書かれていた。
『一千万で殺害されてみませんか?』
意味が分からない。
だが、なんだか俺には願っても無い事のように思えた。これでこのクソまみれな人生を終えられると思うと、胸が高鳴った。自然と震えを帯びた右手を左手で支えながら、返信ボタンを押した。