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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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BSS96 黒いショートショート

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「私が死ぬのが一番父には影響大だと思うよ」
 「なにをいっているの君は」
 「トウヤくん、ふざけているんじゃないんだよ」
 「リナちゃん、それは僕が君の事情を一番知っている存在であることをふまえても、それはおかしいとしかいえないよ」
 「なんで」
 「何で君が死ななきゃいけないんだよ」
 「だってあの父に反旗を翻したいんでしょう?だったらオッケーじゃない。私を殺せばいいのよ。バレないように血糊を拭くタオルも持ってきた」
 「だけど」
 「…」
 彼女は黙りこくって、しばらくすると泣き出してしまった。
 「正直、もう限界なの。父がいってくるんだよ。トウヤくんと別れろって。できないこと知ってるくせにさ」
 「!」
 そういやあそうだろうねとは思うけれど、やっぱりつらい現実ではあった。
 「どうしても、どうしても、今日までなんだよ、生きていれば」
 「…」
 「どうしたらいいんだろう…」
 僕は思い立った。もしその方法を採るならば…。
 「…ねえ、お金今どれくらいある?」
 「え?」
 「僕が持ち合わせているのは7000円」
 「今、…6000円ちょいかな」
 「きてよ」
 僕は彼女の手を引っ張り切符を二人分買う。電車が切符でいける最大範囲に近づくにつれて彼女も話を理解できたようだ。
 「そうか、そういうことか」
 「君だけいかせはしないよ」
 「恨みの相手の娘にそんなに気を使わなくてもいいのに」
 「リナちゃん」
 「なに?」
 「君とあいつは違う。それぞれ違う個人なんだよ」
 「…」
 すっかり暗くなった。デートしていても、ここまで遅くなったらふつうは心配されるだろう。携帯が鳴り響く。僕らはめんどくさくなって近くのゴミ箱に投げ入れる。
 「行こう」
 「うん」
 走る。手をつないで。暖かい。そしてついにたどり着いた。

 切り立った崖。

 落ちたら高度何メートルだろうか。

 網は、しかし張られていない。さすが財政破綻した市だ。

 行くなら今しかない。

 「リナちゃん、キスしようよ」
 「そうだね。っていうか、つきあってから一度もしてなかったね。エッチなことはさすがに外だからできないけど、そっちもしたかったんじゃないの?」
 「したいけど、まだ高校2年だし、仕方がないって。それに」
 僕は彼女の手をつないで、抱き抱えて、抱き上げて、言う。
 「君が今まで僕を、こんな境遇でありながら、しかもかっこわるくて男として選びづらい僕を好いてくれたことがうれしいんだよ。…さあ、もう、いいかな」
 「…うんっ。行こうよ」
 僕はそれを聞いて、笑顔のまま飛び降りるんだ。