BSS17 違和感仕事しろ
この町で、若者たちは、特にこれといった理由もなく、気の向くまま足の向くまま町をぶらつき、時には地べたに座りながら、その個性的なファッションを披露し、男は女をナンパし、女は男に逆ナンを仕掛け、昼も夜も声が耐えることはなく、そんな中警察はなかなか動けず、常に危機と隣り合わせにあるのもまたこの町である。
そんな雑踏の中に私は足を踏み入れた。坂口安吾だったか誰だったかいまいち正確な記憶もしておらず、うろ覚えではあるが、確か「寺社仏閣が壊れてもかまわないが、電車が止まれば困るのだ」と言っていなかっただろうか?否、それだけではない。こちらはその人の名前すら忘れてしまったが、「都会の中にいると、その変わろうとするパワーを感じる。ヨーロッパは守ろうとする分パワーが感じられない」と述べていたではないか。私は入る。このともにふれる不協和音のような、それでいてピアノの名曲(ベートーベンとかシューベルトとか?)をずっと耳の横で流して小川をイメージするような、そんな町に、私は入る。誰一人としてこの町に逆らう格好をしたものはいない。買い食いしながら彼らは自分たちの自由を謳歌する。若いものにこそパワーがある。年をとれば、あとはそがれる一方だ。だから今の国に対する失望間が広がる。20代を使えとも言わないが、せめて30~40代のおじさんぐらいは使ったらどうなんだろうか、と思ってしまう。
私は一人の男に会う。ナンパかなあ、ちょっとイヤではあるが、それなりにかっこいいし、ちょっと興味もあるし、まあ少ししていやになったら帰りましょうか。そう思って彼についていくことにした。
彼はいろいろおごってくれた。そうしているうちに私は目が回ってきた。どうしてだろうか、分からないが、息は苦しく、疲れてきた。すると彼は私を支えてくれるので甘えてしまった。そうしているうちに本当は気づくべきだったのだろう。
気をだんだん失っていく。たとえるならポケモンが全部瀕死したときのあの感覚…。
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「大丈夫かな」
「…ここは…おまわりさん、ってことは」
「安心しな。ここは病院だ。確かに私は巡査ではあるが。君は犯人としてではなく被害者として運ばれてきたんだよ」
「へ」
「最近多いんだよね、ナンパの時におごるものに麻薬を入れていく連中がさ」
「そうなんですか、…、ってじゃあ私もうすこしで」
「ドラッグ・アディクトにさせられるところだったな」
「…」
「怖くなったのかい」
「…あの町で全く違和感を感じられない自分が、情けないです」
「…いや、違和感なんて感じるはずがないよ。あの町だよ?」
でも私は言いたい。
違和感、仕事しろ。
作品名:BSS17 違和感仕事しろ 作家名:フレンドボーイ42