オレンジ色-序章-
窓側の席でぼーっと景色を見ている彼は、渋谷悠一。身長は平均よりは高く、やせ形の体型。髪型は短くもなく、長くもない。顔から受ける印象は、主張が少なそうといったところだ。また、制服はネクタイをゆるめることなくきちんと着ていた。まじめな印象がある。悠一は実際、まじめだが、人づきあいが苦手で、友達がいないような人間だった。
そんな悠一はと言えば…いつも通りだった。話しかける人もいないし、話しかけられる事もない。だから、窓の外を見つつ、クラスメイトの会話に耳を傾けていた。
「ねぇねぇ、歩道橋の話って知ってる?」女の子の声が教室の真ん中ぐらいの机から聞こえてくる。
「知ってるよ。夕焼け空の日に歩道橋の上で一番星を見つけることができたら、願いが叶うってやつでしょ?」甲高い会話声は自然と悠一の耳に入ってくる。
「そうそう。でさ、麻衣がさ、好きな人と歩いてた時に偶然見つけたんだって。そうしたらその人に告白されたんだって!」
「マジで!?よかったじゃん!」
「でもさぁ、あの事知ってたから告白したって感じがなくない?」
「でもさぁ、友達の幸せは祝ってあげようよ…。」
一通り話が終わると、一人は自分の教室へと戻って行った。
―この町には小さな都市伝説のようなものがあった。この町唯一ある歩道橋。夕焼け空の日にその上で一番星を見つけることができれば、願い事が叶うという―
続く…