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製作に関する報告書

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『プロデューサーとしてやっていくだけの能力は無い。小物だから』
 
私がそういうことを言うのは構わないのです。私は外部の人間ですから。けれど、上司が部下のことをそんなふうに言っていいものなのか。ちなみに私の発言の真意はそうではなくて、
 
『柴田氏はプロデューサーとして、ゲーム学校の学生に講演などをしていたようだが、それは分際を過ぎたこと』
 
であり、そういう意味での『良い思い』だったのですが、淀んだ頭の市川氏はそういうことも理解できなかったようです。また、私も理解していただく必要はないので黙っておりました。また、市川氏は、
 
『メモオフのラジオ番組が文化放送で放送されることになった』
 
とも吹聴していましたが、それが本当なのか、私には分かりません。少なくともこの手記を書いている今現在までに、そのような事実は確認されていません。それにしてもいったいFDJの市川氏が何を言いたいのか、何をしたかったのかさっぱり分かりませんが、とにかく、彼の発言は支離滅裂で、狂人のたわごとと言っても良いレベルのものでした。
 
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さて、FDJの市川氏との会見は終わり、ですから、話はここで終わり、なはずなのですが、実はそうではないのはお察しの通りです。
FDJの市川氏が何時までたっても確約書を送ってこず、そして、私は、多分そうではないかと予期していたのです。ですから、私は自分で確約書を製作して、こちらからFDJの市川氏のほうに郵送で送りました。ただ。市川氏だけにまかせておけばきっと事実をうやむやにする。そのことは私も予測できましたから、確約書は市川氏ではなくて柴田氏に送りました。柴田氏がFDJの市川氏のことを憎んでいることはよく知っていましたし、その後釜を狙っていることは察せられました。ですから、私は柴田氏のそのような気分にただのりさせてもらうことにしたのです。私は確約書を送る旨を市川氏、柴田氏双方にメールで通達した上で、柴田氏にメール便で文書を送りました。柴田氏はあるいは驚いたかもしれませんが、同時に、市川氏の面目を潰せるということで喜んで文書に印を押させるだろうと私は理解していました。なによりも私としてはどうしてもFDJの市川氏との一対一のやりとりを避けたいという切実な思いがありました。彼は非常に不誠実な人物で、自分の面子のためであれば、細かい嘘を平気でつくという人物であると私もすでに知っていました。約束も簡単に反故にする人物でありました。ですから、私としてはどうしても証人というものが欲しかったのです。柴田氏や、ほかのスタッフは市川氏と敵対しているということで私にとっては、これ以上ないほどの証人だったのです。私が送った確約書の話とその内容は間違いなく、チーフグラフィックの相澤氏や輿水氏、ディレクターの松本氏にも伝えられはずでした。
 
『確約書の中身はかくかくしかじかで……』
 
柴田氏は喜んで上司の不面目を喧伝するはずでした。そして、そうなれば確約書を取り交わしたという事実は5pb.の中に知れ渡る。何かあって仮に市川氏が確約書そのものの存在を反故にしようとしても、それは社内的に難しくなる。それこそが私の狙いでした。
 
そして、柴田氏は本当にありがたいことに誠実に仕事をしてくれました。彼は上司に捺印させた書面を私に送ってくれました。多分ですが、相当のやりとりはあったのでしょう。文書の市川氏の文字は乱れていましたが、彼の不誠実な言動を思えば、これぐらいの報いは当然といったところでした。ただ、お断りしておきますが、私は市川氏たちの私に対する不誠実はある程度は許すつもりですし、それは仕方がないと思うのです。それはもうよろしい。私が怒るのはFDJの市川氏をはじめ、スタッフの全員が作品に対してまったく敬意を払っていないというその一点にありました。
 
『俺のメモオフ、僕のメモオフ』
 
と喚き、私に対して、
 
『作品に対する敬意が見られない』
 
と私に激昂しながら、その実、彼らこそが、作品を本心では愛していない。それは、いくら努力をして作品が成り立ったとしても、メモオフという作品が彼らのライフワークにはなりえないということへの苛立ちの裏返しとなる感情だったのかもしれません。先にも記したことですが、本当であれば輿水氏もグラフィックの相澤氏も、そしてプロデューサーの柴田氏もアンコールが終わった時点で進退伺いを出すべきでした。
 
『作品を守りきれなかった。申し訳ない』
 
そうやって去っていく。それが作品に対するけじめのつけ方であり、作品に対する愛であったと思います。もっとも、柴田氏もグラフィックチーフの相澤氏も、このような意見には、
 
『そんなの関係ない、それはおまえの意見だ。俺の意見はそうではない』
 
と唇を震わせて憤激すると思いますが。彼らは正論というものを受け付けるだけの器がなく、快不快で動く、禽獣のような人々でしたから。ただ、実際のところ、作り手が通せるスジというものはそれほど多くはないですし、不細工に薄汚い生き方をすれば結局は軽蔑をされて、あとあと自分たちが苦しむことになるのです。私も、
 
『メモオフメモオフ』
 
と念仏のように唱えて、作品になんとかしてすがりつき、最後の一滴まで作品からうまい汁を吸い取ろうというチーフグラフィックの相澤氏や柴田氏、そしてFDJの市川氏、キャラ担当の輿水氏、さらにはディレクターの松本氏に対しては今となっては侮蔑の感情しかありません。もちろん、それはKIDが存続している間であれば許されることでありましょう。ですが、KIDは倒産し、権利はサイバーフロントにさらわれていたのです。柴田氏たちは、権利をさらった会社から、
 
『そんなに言うならば作ってみれば?』
 
といわれて、
 
『作品をありがたく作らせていただく』
 
単なる下請けでしかありません。すでに過去の栄光などない、ただの下請け。そのような身分のいったいどこに誇れる部分があったのか。権利をさらわれ歯軋りをして自分たちのことを、
 
『5gk、5 games KID』
 
と僭称し、しかし、サイバーフロントとの提携がなれば慌てて『5gk』の看板を架け替えて、まるで当然のことのようにしてメモオフ6を作り始める。そのようなブザマな連中のどこに尊敬できる部分があるのか。かといって、
 
『自分はもうついていくことができません』
 
といって身を引くという潔さも無い。元のように。昨日と同じように自分の地位を誇示し、自分の足りない才能を誇って他人を侮る。それが通ると思っている。それが当然のことと思って一片の疑いも持たない低劣さ。少なくとも私はそのような人間は軽蔑しますし、また、そのような人々に翻弄される作品が気の毒だと思うのです。
 
さて、もうすこしだけ話を進めようと思います。私は製作から離れましたが、FDJの市川氏たちのあまりのおかしさの原因を知りたく思い、そこで独自に会社のことを調べ始めました。TYOのこと。それから5pb.のこと。私は会計のことなどまったくわからないずぶの素人ですが、それこそ入門書からはじめて一から勉強をしました。そして、
  
作品名:製作に関する報告書 作家名:黄支亮