がっかりしちゃうじゃない
がっかりする瞬間があった。
たとえば、かがんだとき、下着が見えたらしく男の子たちが顔を見合わせ、ささやきあっている瞬間。髪を撫ぜられたとき。水泳の時間。
あ、と思った。
自分が欲望の対象になることを、気付きたくなかった。
でも目は口ほどにものをいうので、私は気付かざるを得なかった。
知らない人なら良かった。知らない人が、私の裸を、グラビアアイドルを見るようにまじまじと見ても、私は全然平気だった。顔色一つ変えずに、むしろにっこり微笑んでやることさえ出来た。
けれど、親しくしている人にそうされると、私は体中を傷つけて、それからその人の胸倉を掴んで揺さぶってやりたいような気分になった。
何が正しいのだろうか。
動物としては彼らのほうが正しい。ずっと正しかった。けれど私はその正しさを許せなかった。
さいきん、目の前に座った女の人が、すごく襟ぐりの開いた服を着ていて、胸元があらわになっていた。私は思わずその人の胸元を見てしまった。
全く性的なにおいがしなかった。
これだ、不意に思った。
作品名:がっかりしちゃうじゃない 作家名:おねずみ