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それさえかなわぬゆめなれば

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すっと取り出された茶封筒の中には壱枚の寫眞。怪訝な顔をするとあづみは微笑んだ。
「此れを遺影にして頂戴」
心臓が凍りつくような感覚を憶えた。嗚、たれかとめてくれ。
「あづみは解っているのよ。其処まで莫迦ではない積もりよ。もうすぐ此の心臓もとまる」
あづみの顔を見ることは出来なかった。寫眞に目を落とす。何処か寫眞館で撮ったのだろう。美しい着物と結い上げた髪が、余計に哀しみを誘う。
「本当はね、お葬式なんて真っ平御免なの。けれどお母様が、お葬式は死に行く人の為ではなく、生きている人の為にあるって云うから、」


「智也、あづみが死んだら、ちゃんとあづみが死んだことを理解してくれなきゃ、やあよ」


涙が零れそうだった。寫眞に落としてはいけないので、顔を上げる。白い頚を見た。死ぬ人の色だった。