BSS48 土台建築
麻薬・煙草・酒というものには手を出さなかった。バイクで暴走することもなく、いたずらのたぐいもせず、ただのんびりと過ごしていた。人生には何もかもが欠けていなかった。厭世感も感じなかった。希望を持て。そういわれて俺は希望を素直に持った。
そんな俺はリセットできない人生を着実に踏みしめて歩こうと、勉強に次ぐ勉強をして良い大学を卒業。そして良い会社にいける、そう思っていた。
ところが、良い大学をでようがよい会社には入れなかった。大手企業にはなぜか入れてもらうことができなかった。面接、テスト、何一つ不足はないはずだ。それどころか俺よりもできていない人が多く入った。何故だ。これほど俺は固めた土台があるのに。個性とかそういうものでもなさそうだし。というかむしろ個性のある奴は落とされているし。じゃあ何が問題なんだ。何が悪いんだ。
理由は明白だった。何もない。ひねりがない。俺と同じ大学をでた奴らはひねりがあった。賢い奴は頭が固いと言われるが実際は逆だ。賢い奴ほど頭が柔らかく、「これがないならあれでいいや」「こっちの方が近道だぞ」と考えている。…あくまでマニュアルどおりに受験してマニュアルどおりの卒業論文を書いていない奴らだが。
連中は個性を見せようともしていない。そのかわり、ふつうでいることも拒絶した。
個性的でも平凡でもない、第三の道。それがないというわけである。でもそれは何だというのだ。
「存在感」ではない
「発言力」でもない
何だ。何だ。何なのだ。
簡単な話だった。
「土台よりも防具」だ。身を固めることは重要だがそれにとらわれすぎて地縛霊になってしまってはいけない。固めたものを壊して再構築する力。それが俺にはない。作ったら作りっぱなし。
壊したら、壊しっぱなし。
自分の命を壊しても、それを再生できない。
作品名:BSS48 土台建築 作家名:フレンドボーイ42