変態と巡査
「別になんだっていいじゃない。それとも夜の公園に一人でいるのが何か問題でもあるの?」
「いや、それは問題ないんだけどね」
「じゃあ何が問題なのよ」
「君のその格好がね」
警官の服を着た男は、頭に女性物の下着を被り、その上にパンストを被せ、手にはニーソックスを着け、足にはレギンスを足の方からはき、それ以外には何も着けていない男に言った。
「これのどこが問題だっていうのよ。素っ裸ってんじゃ無いんだから」
「問題ありまくりなんだよね。それ全部はき方間違えてるし、股間には何も着けてないし」
「変態! どこ見てんのよ!」
「君にだけには言われたくなかったな。とりあえず署まで来てもらおうか」
「私を捕まえるの?」
「このまま抵抗し続けるんならそうせざるをえないね」
「大体あなた警察手帳見せてないじゃない。本当に警察なの?」
「じゃあ見せたら署まで来てくれるかな?」
「考えてあげてもいいわよ」
「ほら、この通り本物だから」
警官の服を着た男は警察手帳を取り出すと、変質者はにやりと笑った。
「へーえ。よくできた偽物だな」
「なっ、何を言ってるんだ」
「まあその出来なら素人を騙すことはできるだろうが、この俺の目を騙すことはできねえ」
「何者なんだ、お前は?」
「これを見ろ」
変質者はパンストにニーソックスを着けた手を突っ込むと、そこから警察手帳を取り出した。
「そ、それは……」
「俺は倉吹巡査。最近この近辺で中年男性が警察に職務質問され、署に連れて行くと言いながら人気の無い所へ無理やり連れていき、痴漢されるという事件が多発している」
「うぐっ……」
「そこで俺はこう推理した。この犯人は中年男性に対して興奮するという性癖の持ち主で、警察になりすまして犯行に及んでいると踏んだ訳だ。つまり俺はお前をおびき寄せるため罠だったというわけだ」
「くそっ、引っかかってしまった!」
「そうと分かればお前を本当に署に連れてってやるよ」
「……最後にひとつ聞いてもいいか」
「何だ?」
「なんでそんな格好を? 普通に服を着てても釣られたのに」
「これは俺の趣味でな。捜査を理由に勝手にこんな格好をしているんだ」
「なあんだ、そうだったのか! あははははは」
「あっはははははは」
その後、二人とも捕まった。