姫羊デリバリー。
男は徹夜の覚悟を決めて夜を迎える。
夜が更けると
男と睡魔との格闘が幕を開け、
仕事は遅々として進まなくなってしまう。
真夜中を過ぎた頃に突然、
玄関のベルが鳴る。
うとうとしていた男は
はっとして飛び起き、
あわててドアを開ける。
立っていたのは羊である。
羊はまず室内をゆっくりと眺めてから、
部屋の中央のテーブルを乱雑に押しやり
スペースを作る。
そして小脇に抱えていた
折りたたみ式の柵を慎重に設置する。
膝ぐらいの高さの、
白くて低い柵。
羊は試しにその柵を
ぽわんと一度飛び越え、
なんら問題がないことを確認する。
準備がすっかり整った羊は、
男の方へと近寄る。
全身を包む柔らかくカールする毛並。
対照的に情熱的な光を宿す瞳。
羊はウィンクしながら
ささやくように言う。
「さあ、今夜は私のことを
いくらでも好きなだけ数えていいのよ」
(空想/初出→TWITTER_2007.9.16 )
http://twitter.com/tsuyatsuya/statuses/270960552