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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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BSS51 雪が降る・犬は庭にでない

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人が倒れている。彼を助け出すことは容易だ。救急車でも一つ呼んでやればいい。彼は病院に搬送されるまで、5、6たらい回しにされてもきっと生きているだろう。命に別状はないだろう、と断言できる。目立った外傷もなく、内臓も損傷していないようだ。体もそこまで冷えていない。彼は、いわば昏睡状態にあるのだ。だから別に病院にさえ送られれば一命は取り留めるだろう。
 だが彼は助かるまい。この冬の道、都会の人々はただ寒さに震えながらしばれる空気の中をただ黙々と電話などもつ余裕もなく、というより出して話す余裕もなく、また車がくるまで待つ余裕もなく、そもそも通りの端になど目をやる余裕もなく、また目をやれども他人を気にかけられる余裕などあるはずもなく、彼はただ寒さの中で死を迎えるのだ。
 都会に雪が降る。ヒートアイランド現象だの地球温暖化などの各種地球規模の問題が頻繁に起こり、南極ですら氷が溶ける(南極の氷は氷点下80度以下にもなると報告されている、とても冷たい水の結晶である)ほどに騒がれている中、この演歌歌手だかなんだかが砂漠である、と歌ったのも理解できるグレー色の画一的なビル群の間に雪が降る。全く考えられないことであろう。
 しかし誰も喜ぶまい。雪が降り電車のダイヤが乱れ、路面は凍結していくその様をだれも興じるまい。子供も犬も今は家の中でごろごろするようになってしまい、雪だるまはポストカードの表側に西洋式の3段スノーマンが描かれているにすぎない。全くだれも彼もこの幻想的かつ自然の正常である証をだれも喜ばない。その中で司会がせばまるマフラーなぞ首にかけて、耳にも被せて彼らは画一的なおしゃれをして歩く。
 その中で昏睡している彼は、私の会社の同僚である。私は彼に近寄ることなく、少しばかりの思考の後、スーパーマーケットに立ち寄る。今日はおでんにしようか。