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そこには凄惨な事態が移っている。とはいっても、ただ美人が射殺されるだけの動画なのだが、その様子がなぜ動画として流れているのか、ということに疑問を呈する。
　そして、次にあなたはこう言うであろう。「なぜこのような動画がアップロードされているのだ」と。苦言を呈するなかれ。もしこの動画が流されていなかったら。そういうことがこの動画にはエネルギーとして流れている。
　それはともかく、だろう。普通の人間は、ふつうの感覚で思うはずだ。「だからって、打たれているシーンを堂々公開するのはいかがなものだろうか」ふつうだ。それでいい。そうでない人間だけが人間を殺める資格があるのだろう。でもそんな資格はほしくもないし金をもらってもイヤだ、としかいえない。
　動画を見る。今このときも誰かが見ている動画。誰かが随時発信し、インパクトのない動画は記憶の隅に追いやられる傍ら、インパクトのある動画は繰り返し繰り返し参照される。その中で、凄惨な現場を移したこの動画は一際存在感を放つ。
　人は怖い、気持ち悪い、と極度に思うほどそれに対する恐怖心が生まれる。相手を極度に落とし込むマイナスの循環。
　そして、やがて笑みを浮かべるようになるのだ。僕は今銃など向けられてはいない。私は今命をねらわれていない…。それは心の中で復唱される。
　しかし、次の瞬間、その幻想は崩れ落ちるのだ。

　ピストルを持った殺人鬼も、ナイフを持った凶悪犯も、あなたの後ろにすぐいることに気づいただろうか。

　さてここまで読んだあなたに問いかけたいと思う。

　「あなたは今、ニコニコしてますか？」