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ワールドエンドクリムゾン-4 イベールと少年の場合

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「はいできた。」
イベールが借りているのは小さいながらも設備が整った一軒家である。家までぶつかった少年を連れてきたイベールは居間で少年の手の手当をしていた。
「あ、ありがとうございます。」
未だに帽子を目深に被りもごもごと話す少年にイベールは首をかしげる。
「あのさ、私はこの国に来てまだ日が浅いの、この国では帽子を被っているのが礼儀なの?」
「いえ、違います・・でも、僕は・・・。」
イベールから距離を取ろうと後ずさる少年はテーブルにぶつかりそのままテーブルクロスを引きずりガシャガシャとテーブルの上のものが落ちる派手な音がする。
「だ、大丈夫? えと、なにかわけありなのかな。」
割れた食器などのことは気にせずイベールは少年を助け起こし、怪我がないか確認する。
「すみませんすみません。」
謝る少年を落ち着かせようとソファに座らせる。
「私は、別にあなたのこと詮索しない。でも、もしよければ力になる。」
「えっ・・・・。」
イベールはそっと少年を抱きしめた。
「私は、異邦人で信用ならないかもしれない。でも、多分大丈夫だよ。私はあなたの味方になれる気がする。これは勘だけどね。」
顔をちゃんと見せてくれない少年にイベールは笑いかける。少年はしばし戸惑ったあと、恐る恐る帽子を取った。
「やっぱり可愛いね。君は。」
少女めいたガラス玉の様な綺麗な瞳がイベールをうつす。
「可愛いって、これでも僕は立派な男です。」
「うーん男の子にしては華奢だなぁと思ってたから、ごめんね。」
「あの、イベールさんはこの国の人間ではないですよね。言葉になまりがありますが、どちらの?」
少年の質問にイベールは首からさげていたペンダントを見せる。
「私は北の生まれなんだ。ゾロエルからの、勉強のためにここに来た留学生。で、名前聞いてもいいかな?」
そのペンダントはゾロエルに君臨する王家の紋章が刻まれていた。
「僕は、アンリって言います。」
「アンリくんかぁ。私はイベール、よろしくね。」
イベールはアンリの手を握る。
「どっか憂い事があるのかな。迷っている。もしくは逃げている。」
手を握ってイベールはそう言うとアンリの顔は青ざめる。
「あなたは、なにを知っているんですか?」
「警戒しないでよ。手が冷たかったから、なんとなくだよ。私は魔術を勉強していて、ちょっとした変化に敏感なだけ。話してくれたら相談にはのれると思うよ。」
あっけらかんと話すイベールに対してアンリはうつむいてしまう。
「話したら、迷惑かかります。」
アンリの言葉にイベールは立ち上がると台所から一本ナイフを取り出し窓際に向かう。
「うん。迷惑ならもうかかっているかも、なら話ちゃった方が楽になるよ。」
窓を開けると色とりどりの小鳥たちが室内に入ってくる。
「・・・・・・・。」
イベールは小さくなにかを呟くと次々と小鳥を刺していく。
「鳥が・・・・。」
床に全ての鳥を落とすとイベールは窓を閉める。
「これは誰かの遣い魔、家の周りで騒がしくさえずっていたからこうしたけど、これは多分アンリくんと探しているものだよ。」
「僕を・・・。」
床に落ちていた鳥はやがて溶けるように消えてしまった。
「さて、私はもう完全に巻き込まれてしまいました。ぜひわけを話してもらえると嬉しいな。」
これからおこる厄介事に目を輝かせながらイベールはアンリを安心させるように笑いかけた。