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今日はようこそお越しくださいました。まあ、ゆっくりお話を聞かせてもらいましょうか。いえいえ、別に怖がる必要はありませんよ。警察も誰も彼もあなたを罪に問うことはありません。あなたは別に正当防衛としてそれを実行したのですからね。あの場面はみんな見ておりました。子供であってもあのときはあなたが正しかった、といえることでしょう。それに罪に問われるのはあなたではなく彼の方でしょう。それほどあの場面は共感しか得られない場面でございました。
　あなたを襲ったあの人はあなたの旦那さんだった。これは間違いありませんね？彼からあなたは、あのときちょうどドメスティック・バイオレンス（家庭内暴行）、通称ＤＶの被害に遭われていた。暴行の種類も様々だったようですね。放置・殴打・存在否定・羞恥・拘束。あなたはドラマでもなかなか見ることができないような出来事ばかり遭遇しましたね。そしてあの日。
　あなたは働きもせず家にいる旦那さんに変わって、子供さんのために食費を稼ぎに飲食店でバイトしていた。虐待防止策としてあなたは保育園に子供さんを預け、子供さんを連れて帰ろうとしたとき、あなたの旦那さんが現れた。アルコール中毒・ニコチン中毒・コカイン中毒と三大中毒にかかっておられたあなたの旦那さんはその日酒を買うお金をあなたに請求したわけです。ところがその日は子供さんの衣服を買おうとなさっていたわけですから、そっちに回す余裕がない。すると旦那さんはどこで手に入れたのかホテルで見るような包丁を出して寄りつめかかった。あなたは必死で逃げ回り抵抗しながら、相手の包丁をはじいた。

　それが子供さんに刺さった。

　わかっております。あなたが守っていたわけでなく、あのポージングからしても旦那さんの方が罪に問われます。ＤＶ被害も認められて、「夫婦生活継続の困難」に当たるとして離婚申請もすんなり通ることでしょう。
　でも。
　子供さんのことを本当に愛されていたそうですね。あなたに自分のせいになさらないでください、といってもきっと焼け石に水ではありましょう。ですがこれを気に病んでいても仕方はありません。子供さんはきっとわかってくれるはずです。大丈夫ですよ。もう、苦しまない方がいいです。そうでしょうけれど。ええ、それでも…