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フレンドボーイ42
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novelistID. 608
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BSS02 火達磨・犬死に

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がんじがらめに拘束されて交錯したまま犬はなにを思うのか。テレビでは白い犬がコマーシャルというものにでて人気を博しているようだが、この犬とは住む世界がそもそも違うのだろうと思わざるを得ない。いっそ野犬として毒の餌で死んだ方がどれだけ救いがあるか。そう思わずにはいられない。
 別に何らかの宗教の儀式というわけでもない。ただその飼い主が狂乱しているだけにすぎない。焦点の合わない目でよだれを垂らしつつ、家族から隔離され、妻の一人もいず、半ばこの屋敷に引きこもった様相である。この島は日本列島で言えば佐渡位の大きさであり、緯度的には与那国と同程度である。この島で彼はなにを思うのか?…彼はしかしなにも思わない。ただ狂乱の一途をたどり彼は苦しみそしてもだえながら心を失っていく。アルツハイマー症候群の人々とはまた違う形の「ボケ」であるといえよう。心はロックより騒乱で、テクノより電子発信的な、生物のそれとは思えないほど埋没して退廃的な人間が、ひとたび犬を縛り付けたら、鳴き声にはどうも答えることはない。彼はそれを持って油をかけ、隣家に放り投げる。しかし縄は自分が持っている。ヨーヨーが大きくなったようなものを想像すれば話は早かろう。
 彼はその後口に火気をつっこみ放射した。当然彼は瞬く間に火炎人形と化す。粕となって消えていく彼の右手にはしかし導火線が握られ、哀れな犬に燃え移る。犬ごと家は焼け、数軒先まで燃え移った。
 それでも問題はないと判断され、警察を始めだれも、遺族すら来なかった。隣家を始めその一体には彼のような人間しか住んでいなかった。その島の住民にとって気の狂ったものたちは邪魔でしかなく、哀れだという感情は全くなかったのだ。またそれは彼らの経済レベルを表していた。経済的発展が長期的に見込めない故に、そういう人を集めて世話をする余裕がなかったのだった。
 だが犬は決して罪はなかったであろう。皆人ばかりに目がいって、犬は全く問わないのだった。それも仕方あるまい。経済的な事由に縛られる者は、働くことができるものにしか価値を見いだせない。それは必然的であり時に悲劇に手を入れたら喜劇になった脚本のようにすれ違い交わらない。