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フレンドボーイ42
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novelistID. 608
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短編家「花火」 不機嫌

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花火を見るとき彼はいつも不機嫌な顔をする。彼は時にいらいらする。時にビールを飲んで怒り出す。時にはまた寂しげな顔をするので、彼と花火を見に行くとき心中穏やかではいられない。とはいえど夏と言えば「た~まや~」の季節である(人によっては「か~ぎや~」かな?)。だから花火を見に出かけるわけだが、またそこで彼は暗そうな顔をしている。
 「本当にイヤなんだね」
 「この世でいけすかないもののトップ10には入る」
 「なんで」
 「いっつも夏になると聞くよな」
 「だっておかしいじゃん」
 「おまえはアーティスト・Mioの肩を持つのか」
 「だって爆弾に使われる火薬を、花火に持ってこられるなんてすてきじゃない。彼女の言うとおりよ」
 「逆だろ」
 「何が」
 「花火にも使えることで火薬を作る正当性を確立しているようにしか思えない」
 「どういう考え方しているの?変だよ」
 「ふつうに考えてそう考えない方がおかしい」
 「あのねえ」
 そのとき、ふと横を見るとリカちゃんがいた。
 「ごめん二人に割って入っちゃだめかなと思って」
 「平気だよリカちゃん。ねえ」
 「問題ない。ところであいつは」
 「20分後にくる。今はまだ始まったばっかりでそれほど規模の大きいのあがらないからね」
 「研究してるの?なんかの」
 「彼のことはわからないけどね。理系って言っても桐谷君とは違うからね」
 「まあ俺とあいつは目指しているもの違いすぎるしなあ」
 「ねえ、この人花火嫌いとか言うんだよ?花火が爆弾から変わってだれも傷つけなくなるようになるってアレを信じられないって」
 「むしろ爆弾を作るための正当性の確保だろって言ってやった」
 「う~ん。それは…」
 そんな話をしていると、リカちゃんの元に一人の少年がやってきた。
 「待たせたねリカちゃん。あ、久しぶりだね桐谷くん、相澤さん」
 「久しぶり」
 「おまえはどう思う」
 「え」
 彼は今きたばっかで何もわかっていないその少年にかくかくしかじか話して聞かせた。
 「ある程度は正しいと思うよ」
 「えっ」
 言った本人も少しおd路気を隠せないようだった。
 「平和を築くそれだけで確かに死者・負傷者が大勢いたのも事実。花火が爆弾と何ら変わりないのが事実。でもさ」
 一息おいてこういう。

 「人は爆弾ばかりは作れない」
 「は?」
 「人は、残虐なことばかりは考えていられないんだよ。良心というものっていうのはどうしたってどっかしらでてくるんだ。今まで野蛮民族だとか思ってた人たちに、実は自分たちより優れた思想がある、とかね。人間は考える生き物なんでしょ?考え続けているといつしか爆弾ばかり作っていられなくなる。だから作った火薬の何割かを花火に使いたくなる。罪滅ぼしに。それでいいじゃない。少しずつ罪滅ぼしをしたいという人が増えていけば、いつかは火薬=花火という風になっていくさ。今の段階だからまだそういう風になっているだけだろ」
 「…原水爆にも花火のような使い道があると思うか?発電に利用するのだって大きな問題があるって言うのに」
 「見つかるよ。人間だもの」
 私たちはほっとした。人間は悲観的になるべきじゃない。
 大きな光が咲き乱れ、垂れ下がり、その中を轟音が鳴り進んでくる。