小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

BSS86 Hello,

INDEX|1ページ/1ページ|

 
通り魔が最後に殺したのは、彼の家の隣の佐藤さんという方だった。
 彼は発狂してまずスーパーに行くと、私の友人の鈴木を刺して全治二ヶ月の重傷を負わせ、次に山田さんという店員を刺殺。田中さんに数カ所の大けがを負わせたのち、タクシードライバーの中山さん、パン屋の上田さん、コーヒーショップの川村さんを刺した。この三人はその後病院で死亡が確認された。
 それでも通り魔は止まらない。近くの小学校に行くと、児童を数名死傷させ、中学校でまだ若いカップルを刺殺し、電気屋に突入。児島さん、淀橋さんを十数カ所刺して、出ていった。警察官が現れるのにはさらに時間がかかった。110番通報が繋がらなかった。皮肉にもその日は停電が起こってしまったのだ。そして住宅地に入り如月さんの令嬢を刺殺。
 そして最後になくなったのが、佐藤さんだった。
 年は四十五歳、二人の男の子がいた。奥さんはピアノ教室を経営し、本人は商社の営業マンだったという。仕事がその日はたまたま早く終わり、子供の笑顔を楽しみにして帰宅途中、いまや通り魔になっているともつゆ知らず、知っていた顔だったので「こんにちは」と声をかけたところ刺されて死んだというのである。
 彼の鞄の中に入っていたのは「ポケットモンスター ブラック」・「ホワイト」各一本であった。子供のために買ってきていたのだろう。それが子供に残された形見になるとは本人はなにも知らずにおもちゃコーナーで購入したのだろう。
 あのとき私は販売の現場責任者としてそこにいた。にこにこしたあのサラリーマンが、こちらのミスをまったく責めなかったことから、いい人だなあ、と思って、帰宅直後にビールをあけつつつけた16:9の画面にそのお客さんの顔がニュースに映って、初めて彼の名前を佐藤さんだと知った。
 鳴り響いた電話をとると、若い女の子社員だった。
 「三浦さん見ましたかニュース」
 「見たよ。佐藤さんのことだろう」
 「すごくいい人だったのに…何であんな目に」
 「…なんでだろうな。そうして何人も死んでいる中、死んでない人だっているのにな」
 「子供さんはどう思っているんでしょう」
 「ゲームを買っていったくらいだから、もう物事がわかる年齢だものなあ」
 電話の向こうから泣き声が聞こえる。俺は蛍光灯に息を吹きかけた。
作品名:BSS86 Hello, 作家名:フレンドボーイ42